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呪霊は、空から降ってくる乙骨とAを喰らおうと天高く首を伸ばした状態で止められている。
故に、地面から口までの高さは目算で20m以上ある。
さっきまでの三人は意識を失っていたおかげで落としても問題なかったが、残っている三人はしっかりと意識があって、自力で歩けるほどだ。
こんな高さから飛び降りれば、恐怖が勝つに決まっている。
かといって、乙骨は一度に三人抱えて降りることは出来ないし、一人ずつ降ろすのも効率が悪い。
「…私らが抱えて降りるか」
めんどくせ、と小さく呟きながらも、真希は続ける。
「ほら、パンダも行くぞ」
「え、俺も? 一般人相手に大丈夫か?」
「きぐるみって事にしとけばいいだろ」
「無茶言うなあ〜」
そんな会話をしながらも、二人(正確には一人と一匹)は軽く地面を蹴って、器用に呪霊の体を足場にして駆け上がる。
到底普通の人では登りきれないような場所に難なく到達すると、二人は乙骨と少し話した後、それぞれ高校生を一人ずつ抱えて呪霊の口から飛び出した。
「―わあ、凄い〜。 乙骨くん、着地したら足折れちゃうんじゃないかと思って心配したわ」
「あはは…降りるだけなら、なんとかなるよ」
無事着地した乙骨に、ぱちぱちとAは手を叩く。
見た目は細身な乙骨だが、呪力を扱える時点でその身体能力は常人の域ではない。
そうして、乙骨、パンダ、真希が高校生達を救出し終わったのを見て、Aはようやく瞳を閉じた。
途端に呪霊が雄叫びを上げて動き出すが、その動きは最初よりずっと遅い。
呪霊から十分離れた位置に救助した高校生達を集めて、残りはあの無駄に大きな呪霊を祓うだけ――と、なったところで。
「ユキ! ユキッ!!」
傍らで、やけに煩い声がしてAはちらりとそちらを見た。
最初に乙骨が助けた、ユキ、というらしい女子高校生が、助け出した男子高校生の一人に揺さぶられている。
もうその女子高校生は長くない。これから徐々に体温が奪われ、間もなくして動かなくなるだろう。
耳障りな声の主はこれか、と冷めた目でAは男子高校生を見る。
「ユキ、ユキが…! ユキを助けてください…!」
震えた声で、縋るように言う男子高校生。
「ジュン、くんも…! ジュンくんも、助けてください…!」
すると、その男子高校生の隣でまた一つ声が増える。
懇願しているのは、ぼろぼろと止めどなく涙を流しながら意識の無い高校生のうちの一人に寄り添う女子高校生だ。
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カナデ(プロフ) - 頭のイカレた美女が大好きです!!!更新待ってます! (2022年10月29日 23時) (レス) @page30 id: d6342d80f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ポチ | 作成日時:2021年3月16日 22時