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一番初めに乙骨が救出した高校生は、呪いへの耐性がよほど弱かったのか、口から漏れる息がひどく浅くなっている。すぐにでも家入にみせないと危ないだろう。
ふわり、とそんな高校生を危なげなく受け止めてから、Aは暫し考える。
コレを助ける義理はないが、このままだとコレは狗巻達が祓い終わるまでもつか怪しい。
が、Aは狗巻との約束通り、高校生達を見捨てずに助け出すという選択肢は取った。
狗巻達からすれば、ここでコレが死んでしまってもAのせいだとは思わないだろう。
故に、このままコレが死んでしまった場合、もしかすると狗巻は後悔やらで表情を変えてくれるのでは、とAは思う。
「(…見殺そうかなぁ)」
Aは、コレを救う術を持っている。
持っているが、使うかどうかは、気分次第だった。
「Aさん、次の人いいー?」
「はあい〜」
そっと死にかけの高校生を地面に横たえて、また乙骨の方へと向かう。
既に甲羅に残った小さな呪霊達は元あった6分の1程度の数になっており、狗巻が呪言を使うのはあと一回。
ごほっ、と咳き込んだ狗巻の口から、つう、と一筋血が流れたのを見て、Aは笑みを深くした。
―甲羅の呪霊を全て祓い終わったのと、重症の高校生三人を呪霊の中から助け出したのは、ほぼ同じタイミングだった。
「こっち終わったぞー」
パンダが言いながら、真希と狗巻と共にAの方へと向かってくる。
「じゃ、げ」
パンダに相槌を打った狗巻の声は、最初の声の面影が無いほどに枯れていた。
Aの予想通りに酷使してくれたらしい。
「あらあら、狗巻くん♡ 素敵な声ね。 ああ、真正面から狗巻くんを見れないのがもどかしいわ…」
うっとりと心奪われながらも、Aは呪霊から目を逸らさない。否、逸らせない。
視界から外れてしまえば術式の対象外になってしまうせいで、Aは乙骨を放り投げてから、瞬きの一つさえする事なく呪霊を見続けていたのだ。
「Aさーん」
ひょこっ、と開きっぱなしになっている呪霊の口から顔を出す乙骨。
それに続いて、多少疲弊しているものの、さっき運び出した三人よりは遥かに元気そうな高校生達が続けて三つ顔を出す。
「あら、残り三人は自力で上がってこられたのね」
「うん。 えっと、この人達はどうやって降りたらいいかな…?」
「? そのまま跳べばいいじゃない」
「ですよねー…」
困ったように返す乙骨に、Aは首を傾げた。
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カナデ(プロフ) - 頭のイカレた美女が大好きです!!!更新待ってます! (2022年10月29日 23時) (レス) @page30 id: d6342d80f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ポチ | 作成日時:2021年3月16日 22時