第4話【捨てる人とすくう人】 ページ14
ばしゅっ、とさっきまで乙骨が目を合わせていた呪霊が真希の手によって祓われるのを見ながら、Aは続ける。
「あの呪霊は、一体だと人の動きを全部止めることなんて出来ないのよ。 多分、十体とか、もっと沢山集まらないとだめなのね」
「だから、三分の一…?」
「そうよ〜。 それくらいなら取りこぼしもしないし、散らばっても纏まる前に祓いきれるもの」
本当は、乙骨もあの目玉を祓う予定だった時は、狗巻の喉を限界ギリギリまで酷使するためにも倍くらいの数を散らそうとしていた…とは、言わずにAは微笑む。
「さあ、そのまま次もやっちゃって〜! 狗巻くん!」
「じゃけ!」
まだそれほど掠れていない声で返事をした狗巻は、次の範囲めがけて「散れ」と命じる。
そして、散らばった呪霊を間髪入れずに真希とパンダで祓う。
その作業を三回繰り返し、ようやく甲羅の半分ほどの面積が露わになったとき。
「さあ、乙骨くん。 出番よ〜」
「あっ、うん!」
Aは狗巻達に一旦下がるようジェスチャーを送ってから、一度呪霊から視線を外し、乙骨を呼んだ。
術式から解放され自由を得た呪霊は再び動き出すが、その射程から十分離れた位置で、再び閃光弾をポケットから取り出す。
「次も狗巻くんたちのやる事は変わらないけれど、乙骨くんを入れるためにちょっと口を開いてもらう必要があるのよね」
「口を開いてもらう? アレにか?」
アレ、と言いながら真希は視線をそちらに向けずに、指先だけで亀のような呪霊を指す。
「そうそう〜。 だから、あそこまで近づかないといけなくて…合図の声が聞こえないと困るから、次は私が出てから五秒後に狗巻くんの呪言をお願いね。 あ、乙骨くんは一緒に来てね〜」
「え、うん…」
何故か、妙に嫌な予感がしながらも素直に返す乙骨に、Aは満足気に笑う。
そして、
「じゃあ、失礼するわね」
ひょいっ、と乙骨を肩に担いでそんなことを言った。
「えええ!? えっと、Aさん…!?」
「五秒だけ我慢して〜。 ガールフレンドさんも、ね?」
とても男子高校生を軽く担げるようには見えない細腕だが、Aはふらつくことなく安定した足取りで前に進む。
「じゃあ、数えてね。 いーち、」
とんっ、と地面を蹴ると、わずか数歩で呪霊と離れていた距離は埋まる。
「にーい」
呪霊の眼前までくると、まるで自らの存在をアピールするかのように、その場でわざとらしく足を止めた。
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カナデ(プロフ) - 頭のイカレた美女が大好きです!!!更新待ってます! (2022年10月29日 23時) (レス) @page30 id: d6342d80f2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ポチ | 作成日時:2021年3月16日 22時