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陸【柱への任務】 ページ6

「昨晩、隊士から鴉が飛ばされてきてね。 それが少し気になる内容だったから、急だけど君たちに集まってもらったんだ」


聴くもの全てを虜にするよな、穏やかな声は少しだけ申し訳なさを含んでそう言った。


そんな自分の前で、片膝をつき、頭を垂れて静かに言葉の続きを待つ柱たちを見て、耀哉はいつものように微笑を浮かべて話を続ける。


「ここから少し先の山の中腹で、齢十数くらいの女の子が隊士の逃がした鬼を殺したらしい。 しかも、その子はその身一つで鬼を押さえつけて、最後は隊士の目でも追えないほどのはやさで刀を振るったそうだよ」


「…!!」


数人の柱が息をのむ。鬼は、普通の人間より遥かに優れた身体能力や怪力を持つ。


鬼殺隊に所属する隊士たちが皆“呼吸”という方法を用いて身体を強化するのは、人の身で鬼と対等に渡り合うのは容易なことではないからだ。


確かに道具や方法さえ工夫すれば呼吸も日輪刀も使わずに鬼を殺すことは可能である。


だが、体を鍛えている大男でもない、たった十数の少女が鬼に力で打ち勝つなど普通は考えられないことだった。


「その子は…刀を、持っていたのですか?」


黒く艶やかな髪に蝶の飾りが映える可憐な女__花柱の胡蝶カナエは、信じられないといった様子で耀哉に尋ねた。


「隊士の報告によれば持っていたそうだよ。 それも、日輪刀ではない刀を」


「日輪刀以外の刀で鬼を斬っただと…!?」


「そもそも、廃刀令が出ている時代に少女が刀を持っていることも普通ではない…」


耀哉の言葉に驚愕する音柱・宇随天元と、それに続けて静かに瞳孔の映らない瞳から涙を流す、岩柱・非鳴嶼行冥。


「そうだね。 未だ彼女の正体は不明だけど、少なくとも鬼の仲間でないことは確かだ。 そこで、君たちには無茶を言って申し訳ないんだけれど」


一度そこで言葉を止めてから、耀哉はその慈愛の籠った眼差しを柱たちに向け、続けた。


「彼女を、鬼殺隊本部まで連れてきて欲しいんだ。
 彼女はきっと、鬼殺隊に何か大きな利益をもたらしてくれる」


その言葉は、産屋敷家の者に代々伝わる先見の明からくるものだろうか。


文字だけみれば抽象的にも思えるであろうその言葉は、しかしはっきりとこの場にいる全ての者に確固たる確信を得させていた。


その少女は、必ずこの鬼殺隊に必要な存在なのだ、と。









「御意」


横一列に並んだ柱たちは皆、少しのずれもなく声をそろえて答えた。

漆【この世界は】→←伍【鬼を狩る組織】



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ポチ(プロフ) - にゃけいさん» コメントありがとうございます! ああぁ、すみません…おばあさまは、残念ながら…もう、もう…! 泣いていただけて作者もおばあさまも喜んでおります、ありがとうございます。゚(゚´///`゚)゚。 (2021年4月14日 0時) (レス) id: fa11ea0a31 (このIDを非表示/違反報告)
にゃけい - お祖母様がア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ 泣いちゃったじゃんかあああ〜 (2021年4月12日 0時) (レス) id: 6b9d02d201 (このIDを非表示/違反報告)
ポチ(プロフ) - 海月さん» コメントありがとうございます! わぁああありがとうございます…!!私も両作品大好きなので、これからも応援していただけるようコツコツ更新頑張りますね!温かいお言葉が何よりの活力です、ありがとうございます! (2021年4月9日 21時) (レス) id: fa11ea0a31 (このIDを非表示/違反報告)
海月(プロフ) - コメント失礼します!終わセラと鬼滅どっちも好きなんですよね!だからこの作品とても素敵です!好きです!いつまでも応援してます!更新頑張ってください! (2021年3月23日 23時) (レス) id: 35dd37fd2f (このIDを非表示/違反報告)
ポチ(プロフ) - 柊姉妹尊い!さん» コメントありがとうございます!遅くなって申し訳ありません…。ゆっくり更新していきますね!大変長らくお待たせいたしましたm(__)m (2021年3月10日 19時) (レス) id: d4a5824d33 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ポチ | 作成日時:2020年5月13日 0時

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