弐拾玖【自己紹介】 ページ29
「ほらほら、不死川くんも」
心底嫌そうにしている不死川実弥を胡蝶が促す。
すると、「チッ」と小さく舌打ちをしたあと、「…風柱、不死川実弥」とだけ言った。
意外だ。彼はこういうのを一蹴するタイプにも見えていたが、案外女性には強気に出れないような紳士的な一面もあるのだろうか。
「…岩柱の、悲鳴嶼行冥だ…」
続いて名乗ったのは、柱の中でも一番体の大きい盲目の男。
何に対してかは知らないが、「このような小さき子が…なんと哀れな…南無…」と呟いて両の目から涙を絶えず流している。
何を哀れんでいるのかは知らないが、まあこの男からすれば大抵の人間は小さく見えるだろう。
「俺は音柱の宇随天元。 派手を司る祭りの神だ! 派手によろしくなぁ、柊!」
そして最後に、派手な額当ての男が一段と煩く自己紹介した。
「…Aで良いわよ。 よろしくね、胡蝶、実弥、悲鳴嶼、宇随」
久々に呼ばれた“柊”という呼び名に一瞬もやっとした不快感が胸の内に広がったので、訂正を入れておいた。
…この世界にいる間くらいは、あの名前で呼ばれなくても許されていいだろう。
「オイ、俺は名前で呼んでいいなんて言ってねェぞ…!」
「貴方の名前長いのよ。 基本的に人の名前は短い方で呼ぶことにしているの」
「ンだとゴラァ」
噛みつく実弥を適当に流していれば、何が面白かったのかそれを見た宇随が腹を抱えて笑い始め、余計に実弥の眉間に刻まれる皺が深くなる。
「柱って変なのばかりね」
「そうかしら〜?」
常に怒っている実弥とは正反対に、どこまでも穏やかな調子を崩さない胡蝶は絶えず微笑みを浮かべて実弥と宇随を眺めている。
「そういえば、お館様の話では異形同士は徒党を組まないのよね?」
「…? ええ、そうね」
未だ何やら言い合っている実弥と宇随を余所に、胡蝶に聞けば彼女は一瞬何か考える素振りをしてから、そう答えた。
「そう。 出来るだけ早く柱になりたいのだけど、上位の異形に関する情報とか、何か知っていたりしないかしら」
「入って早々柱か! 派手でいいな!!」
実弥とのやり取りを終えたのか、宇随もこちらの話に参加してきた。
「柱になれば屋敷を貰えるのでしょう? とりあえず、住むところが欲しいの」
「うーん、そうねえ。 そういえば、最近南東の方の集落が連続して鬼に襲われている話があったわね」
南東、という言葉に一瞬よぎる場所があったのに、知らないふりをした。
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ポチ(プロフ) - にゃけいさん» コメントありがとうございます! ああぁ、すみません…おばあさまは、残念ながら…もう、もう…! 泣いていただけて作者もおばあさまも喜んでおります、ありがとうございます。゚(゚´///`゚)゚。 (2021年4月14日 0時) (レス) id: fa11ea0a31 (このIDを非表示/違反報告)
にゃけい - お祖母様がア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ 泣いちゃったじゃんかあああ〜 (2021年4月12日 0時) (レス) id: 6b9d02d201 (このIDを非表示/違反報告)
ポチ(プロフ) - 海月さん» コメントありがとうございます! わぁああありがとうございます…!!私も両作品大好きなので、これからも応援していただけるようコツコツ更新頑張りますね!温かいお言葉が何よりの活力です、ありがとうございます! (2021年4月9日 21時) (レス) id: fa11ea0a31 (このIDを非表示/違反報告)
海月(プロフ) - コメント失礼します!終わセラと鬼滅どっちも好きなんですよね!だからこの作品とても素敵です!好きです!いつまでも応援してます!更新頑張ってください! (2021年3月23日 23時) (レス) id: 35dd37fd2f (このIDを非表示/違反報告)
ポチ(プロフ) - 柊姉妹尊い!さん» コメントありがとうございます!遅くなって申し訳ありません…。ゆっくり更新していきますね!大変長らくお待たせいたしましたm(__)m (2021年3月10日 19時) (レス) id: d4a5824d33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ポチ | 作成日時:2020年5月13日 0時