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弐拾伍【鬼の命と、人の命と、】 ページ25

産屋敷耀哉と向かい合う私の後には、彼に向って立膝をつく柱の隊士が四人、横一列に並んでいる。


最初こそ不死川実弥が「お館様には敬語を使えやァ…!!」と怒気を含んだ声をもらしたりもしたが、今の私は産屋敷耀哉に仕えているわけでも何でもないので無視した。


柱は皆産屋敷耀哉に対して並々ならぬ忠誠心を抱いているようで、鬼殺隊を私の知っているような“組織”と一緒にするのはまだ早計なのかもしれない。


「手荒な真似をした上に、礼儀を欠いた事をしたね。 すまない」


「いいえ。 それで、話というのは?」


低く穏やかな声が告げた謝罪を、簡単に受け取って話の続きを促す。


「君のその力。 実弥やカナエ、天元、そして他の隊士からも聞いているよ。 是非、鬼を殺すために役立ててくれないかな」


だが産屋敷耀哉はそんな私に怒るわけでもなく、どこまでも落ち着いた様子で予想していた通りの話を持ち掛けた。


「…そうね。 条件次第では構わないわ。 私もいろいろと足りないものがあって困っているのよ」


ので、私も用意していた答えを返した。


最初は入隊どころかこの男の話に耳を傾ける気さえさらさら無かったのが、執念深さに負けてこうしてここに足を運んだ今、条件次第では鬼殺隊に入隊するのもやぶさかでないと思えるほどに心境は変化していた。


「足りないもの、かい?」


「ええ。 具体的には、たくさんの鬼の命と、たくさんの人間の命と、上位の吸血鬼の命」


「人間の、命…!?」


私の発言に対し何人かの柱の驚愕した声が重なる。その中にはいくつか明確な敵意が含まれたものも紛れていた。


「吸血鬼…」


が、産屋敷耀哉はそれよりも“吸血鬼”のほうに反応したようだ。


「知らないかしら?」


「…いるとしたら、西洋のほうだろうね。 日本では聞かないかな」


「そう」


まあ、このあたりは予想していた範疇だ。元よりあまり期待はしていなかった。


「でも、君の必要なものの一つ、“鬼の命”は鬼殺隊にいれば自ずと手に入るよ」


産屋敷耀哉が“人間の命”に触れず話を進めることにしたからか、未だ物言いたげな視線は背後から感じるものの柱の面々は皆押し黙った。なるほど、見事な忠誠心だ。


「その事なんだけれど、残念ながら私のいう“鬼”と貴方たちのいう“鬼”には齟齬があるみたいなのよね。

 …天來皇」


見た方が色々とはやいので、言いながら刀を鞘から抜き、地面に突き刺した。

弐拾陸【この世界の、鬼】→←弐拾肆【鬼殺隊の長】



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ポチ(プロフ) - にゃけいさん» コメントありがとうございます! ああぁ、すみません…おばあさまは、残念ながら…もう、もう…! 泣いていただけて作者もおばあさまも喜んでおります、ありがとうございます。゚(゚´///`゚)゚。 (2021年4月14日 0時) (レス) id: fa11ea0a31 (このIDを非表示/違反報告)
にゃけい - お祖母様がア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ 泣いちゃったじゃんかあああ〜 (2021年4月12日 0時) (レス) id: 6b9d02d201 (このIDを非表示/違反報告)
ポチ(プロフ) - 海月さん» コメントありがとうございます! わぁああありがとうございます…!!私も両作品大好きなので、これからも応援していただけるようコツコツ更新頑張りますね!温かいお言葉が何よりの活力です、ありがとうございます! (2021年4月9日 21時) (レス) id: fa11ea0a31 (このIDを非表示/違反報告)
海月(プロフ) - コメント失礼します!終わセラと鬼滅どっちも好きなんですよね!だからこの作品とても素敵です!好きです!いつまでも応援してます!更新頑張ってください! (2021年3月23日 23時) (レス) id: 35dd37fd2f (このIDを非表示/違反報告)
ポチ(プロフ) - 柊姉妹尊い!さん» コメントありがとうございます!遅くなって申し訳ありません…。ゆっくり更新していきますね!大変長らくお待たせいたしましたm(__)m (2021年3月10日 19時) (レス) id: d4a5824d33 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ポチ | 作成日時:2020年5月13日 0時

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