弐拾【独り娘】 ページ20
「でももう死ぬわね」
若いうえに一人娘なのに勿体ない。なんて、他人事のような感想を抱いて、くるりと部屋を見渡す。
すると、すぐに“彼女の両親だったもの”の一部が目に入った。
床に散らばっている“それ”が語るのは、ついさっきまで一人娘だった彼女が天涯孤独に陥ったという非情な現実、ただそれだけだ。
__いっそ、このままこの子は死んでおいた方が幸せかもしれない。
「…ここの医者は」
「うーん、どっちだったかしら…。 ところであなた、何でこんなところに?」
息も段々と浅くなっているし、もう助からないと判断して女を余所眼に目の前の男に問いかける。
用事もなくこんな小さな集落にはやってこないだろう。
「その前にこの女が先だ。 医者に案内しろォ」
「別にいいけれど、もう助からないと思うわよ。 多分こっち」
記憶を辿りながら、隣か、さらにその隣の通りだっただろう、と思い歩き始める。男は、丁寧に女を抱えてから黙って私の後ろをついてきた。
黙って、歩くこと数分。
無事迷わずに医者の家までたどり着けば、男は今この瞬間息を繋ぎとめているのが奇跡とも言っていいような状態の女を手際よく医者に預けた。
それから、慌てて治療に取り掛かった医者を確認してその場を立ち去ろうとすれば、「ついてこい」と男に声をかけられた。
理由を聞いても、「来ればわかる」としか言われないので、仕方なく今度は私が男の後ろをついて歩く。
また、暫く無言の間が続き、集落と山の境目あたりまで来た頃。
私がちょうど、あの老婦人と出会った場所あたりで、男は足を止めた。
前方、山の奥からは人の気配が三つ迫ってくる。
「…一度負けたから囲んで再挑戦、というわけでもなさそうね。 何が目的かしら」
「……」
問いかけても、男は何も答えない。
諦めて迫る気配に意識をやれば、一つはこの前の女の気配で、もう二つは知らないものだった。
そのうち片方はこの男と同等程度動けそうな雰囲気だが、もう一つはそこらの一般人と大差ないくらいに弱い。
と、考えていれば目の前にシュンッと静かな音を立てて、派手な額当てをした男が現れた。
「待たせたな、不死川」
「いや、先に行っちまって悪ィ」
「構わねぇよ。 間に合ったか?」
「一人は助けられたが、あとは…」
「そうか」
会話からして、この額当ての男も鬼殺隊の一員なのだろう。服装は随分と個性的だが、よく見れば男と同じ布を使っている。
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ポチ(プロフ) - にゃけいさん» コメントありがとうございます! ああぁ、すみません…おばあさまは、残念ながら…もう、もう…! 泣いていただけて作者もおばあさまも喜んでおります、ありがとうございます。゚(゚´///`゚)゚。 (2021年4月14日 0時) (レス) id: fa11ea0a31 (このIDを非表示/違反報告)
にゃけい - お祖母様がア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ 泣いちゃったじゃんかあああ〜 (2021年4月12日 0時) (レス) id: 6b9d02d201 (このIDを非表示/違反報告)
ポチ(プロフ) - 海月さん» コメントありがとうございます! わぁああありがとうございます…!!私も両作品大好きなので、これからも応援していただけるようコツコツ更新頑張りますね!温かいお言葉が何よりの活力です、ありがとうございます! (2021年4月9日 21時) (レス) id: fa11ea0a31 (このIDを非表示/違反報告)
海月(プロフ) - コメント失礼します!終わセラと鬼滅どっちも好きなんですよね!だからこの作品とても素敵です!好きです!いつまでも応援してます!更新頑張ってください! (2021年3月23日 23時) (レス) id: 35dd37fd2f (このIDを非表示/違反報告)
ポチ(プロフ) - 柊姉妹尊い!さん» コメントありがとうございます!遅くなって申し訳ありません…。ゆっくり更新していきますね!大変長らくお待たせいたしましたm(__)m (2021年3月10日 19時) (レス) id: d4a5824d33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ポチ | 作成日時:2020年5月13日 0時