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拾玖【熊の正体】 ページ19

そうして老婦人の家がある通りの、三つ隣の通りまで来た時だった。


「…熊、ねえ」


通りの入り口あたりで目に入った光景に、自然と足を止めてそう漏らす。


幾つもの戸が開け放たれた家からは、この世界に来てから嗅いだ中で一番濃い血の香りがした。


誰が見ても、この通りが何者かに荒らされたのは一目瞭然だろう。


通りの奥の方まで進み、ちらりと家の中を覗く。


そこには、首を締めあげられて宙で足をばたつかせている少女と__


異形が、いた。


「アヒャヒャッ、また女が増えたァ!! お前は次に食ってやるからそこで大人しくしてなァ!!」


下品に唾を飛ばしながら笑う異形は、言い終わるや否や手に持っている女の首に舌を這わせた。


その女の顔には、見覚えがあった。


__昼間、米俵を運んだ後に談笑していたあの子だった。


「かっ…ひゅ…」


彼女の口からは空気の漏れる音しかせず、目線も定まっていない。私がいることに気づける余裕もなさそうだ。


≪残念〜。 鍋にはできなさそうだね≫


「そうね」


言いながら、刀に手をかける。


未だにこの生き物の急所が分からないが、恐らく失った個所の多さはあまり機能停止とは直結しないだろう。


また、予想でしかないが失血死などとも縁が遠そうである。


なので急所である一部を斬れば、それですぐ死に至るのだろう。


「まあ、どんな生き物でも中枢は頭が定番でしょう」


そう言って、首を跳ね飛ばそうとしたとき。


異常な速さでこちらに向かってくる、新たな人の気配を感じた。


刀を抜くのをやめ、瞬時にその場を飛び退いて家の中から通りの方へと移動する。


「___風の呼吸、捌ノ型。 初烈風斬り」


直後、さっきまで私がいたところに広がる、風の渦のような斬撃。


「…この声」


既視感のある剣技に、聞き覚えのある声。脳裏に浮かぶのは数日前のあの白髪の男、ただ一人である。


答え合わせのために数秒その場でおとなしく待っていれば、やはり予想通りの人物が家の中から姿を現した。


「…よォ」


顔や体中に目立つ傷跡が特徴的な、人相の悪い男の瞳が真正面から私を捉えた。


「こんなところにいやがったのかァ」


「いつまでも森にいるわけにはいかないじゃない」


言いながら、鬼の腕から解放されて地面に横たわっている女の側による。


「…あら、まだ生きてるの」


首に手を当ててみれば、驚いたことに僅かにだが血管が動いている感覚と温もりが伝わってきた。

弐拾【独り娘】→←拾捌【悲鳴と血の匂い】



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ポチ(プロフ) - にゃけいさん» コメントありがとうございます! ああぁ、すみません…おばあさまは、残念ながら…もう、もう…! 泣いていただけて作者もおばあさまも喜んでおります、ありがとうございます。゚(゚´///`゚)゚。 (2021年4月14日 0時) (レス) id: fa11ea0a31 (このIDを非表示/違反報告)
にゃけい - お祖母様がア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ 泣いちゃったじゃんかあああ〜 (2021年4月12日 0時) (レス) id: 6b9d02d201 (このIDを非表示/違反報告)
ポチ(プロフ) - 海月さん» コメントありがとうございます! わぁああありがとうございます…!!私も両作品大好きなので、これからも応援していただけるようコツコツ更新頑張りますね!温かいお言葉が何よりの活力です、ありがとうございます! (2021年4月9日 21時) (レス) id: fa11ea0a31 (このIDを非表示/違反報告)
海月(プロフ) - コメント失礼します!終わセラと鬼滅どっちも好きなんですよね!だからこの作品とても素敵です!好きです!いつまでも応援してます!更新頑張ってください! (2021年3月23日 23時) (レス) id: 35dd37fd2f (このIDを非表示/違反報告)
ポチ(プロフ) - 柊姉妹尊い!さん» コメントありがとうございます!遅くなって申し訳ありません…。ゆっくり更新していきますね!大変長らくお待たせいたしましたm(__)m (2021年3月10日 19時) (レス) id: d4a5824d33 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ポチ | 作成日時:2020年5月13日 0時

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