拾弐【交渉決裂】 ページ12
予想外の誘いに数秒思案したのち、
「…そうねえ。 悪いけどお断りするわ」
と言って断れば、男は明らかに不機嫌そうに眉間にしわを寄せた。
「あァ? 納得のいく理由を聞かせてもらおうじゃねェか」
「私、今は自分のことで手いっぱいなのよ。 だから貴方たちのお誘いにはお返事できないわ。 ごめんなさいね」
実を言うと、内心ではあまり申し訳ないとは思っていない。が、一応形だけでもそう見えるように、眉を下げて申し訳なさそうな表情を作る。
彼らの手前、理由は適当にぼかして答えたが率直に言うならこうである。
“鬼殺隊とやらに入って鬼を殺すメリットが私にない。”
まあ、しいて言うならこの世界での就職先が見つかるくらいだろうか。
だが、鬼を殺すために奔走していて本来の目的のために動きまわる時間が減るのは避けたいところだ。
「…それに、ただでさえ抗えない力に生まれた時から散々搾取されてきたの。 上に立たれるのは嫌いなのよね」
ぽつり。小さく呟いたそれは、恐らく彼らの耳にも届いただろう。
これは合理性も何もない、本音に近いただの独り言である。
元の世界では、随分色んなものに縛られて生きていた。そのせいか、恐らく心の底では“鬼殺隊”という明確な目的を持って動く一つの“組織”に組み込まれることを嫌悪しているのだろう。
「…と、いうわけだから。 お引き取り願えないかしら?」
にこり。笑顔を浮かべてそう告げる。否、の返事は聞かないつもりだ。
「…悪ィが聞けねェな。 俺らにも俺らの事情がある」
「一緒に来て、お館様のお話だけでも聞いてくれないかしら…?」
男はのほうは短気なのか、あまり言葉を選んでいる節がない。
それに反して、女は私の様子を伺いながら、極力殺伐とした空気にならないよう努めているのが言葉遣いから伝わってくる。
が、態度は違えどどちらもここで私を見逃す気はさらさら無いらしい。
≪あはは。 A、困ってるねえ≫
嗤うだけなら黙っててくれるかしら?、と、脳内のうるさい声を一蹴する。
この調子だと、どちらも譲らないせいで終わりが見えそうにない。…仕方ない。
「何を言われようとお断りよ。 帰ってちょうだい」
そう言って、返事も聞かずに二人に背を向けて歩き出す。
「待って!」
そう言って、女が一歩前に出た瞬間。
スパァンッ、と女のつま先が触れるか触れないかくらいの所を斬撃が駆け抜け、地面が綺麗に抉れた。
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ポチ(プロフ) - にゃけいさん» コメントありがとうございます! ああぁ、すみません…おばあさまは、残念ながら…もう、もう…! 泣いていただけて作者もおばあさまも喜んでおります、ありがとうございます。゚(゚´///`゚)゚。 (2021年4月14日 0時) (レス) id: fa11ea0a31 (このIDを非表示/違反報告)
にゃけい - お祖母様がア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ 泣いちゃったじゃんかあああ〜 (2021年4月12日 0時) (レス) id: 6b9d02d201 (このIDを非表示/違反報告)
ポチ(プロフ) - 海月さん» コメントありがとうございます! わぁああありがとうございます…!!私も両作品大好きなので、これからも応援していただけるようコツコツ更新頑張りますね!温かいお言葉が何よりの活力です、ありがとうございます! (2021年4月9日 21時) (レス) id: fa11ea0a31 (このIDを非表示/違反報告)
海月(プロフ) - コメント失礼します!終わセラと鬼滅どっちも好きなんですよね!だからこの作品とても素敵です!好きです!いつまでも応援してます!更新頑張ってください! (2021年3月23日 23時) (レス) id: 35dd37fd2f (このIDを非表示/違反報告)
ポチ(プロフ) - 柊姉妹尊い!さん» コメントありがとうございます!遅くなって申し訳ありません…。ゆっくり更新していきますね!大変長らくお待たせいたしましたm(__)m (2021年3月10日 19時) (レス) id: d4a5824d33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ポチ | 作成日時:2020年5月13日 0時