壱【これはきっと天罰だ】 ページ1
声を、荒げて叫んでいた。
「美十!」
棺が七つ並ぶ、真っ白な場所で。
「五士!」
血まみれになって、もう動かない仲間の名前を。
「小百合!」
床の上、至る所に散らばった血だまりに反射して映る顔は、三つ。
「時雨!」
絶望と怒りに歪むグレンの顔と、微笑を浮かべる真昼の顔と、
「…深夜ぁあッ!!」
こうなることは知っていたはずなのに、白々しく泣き叫ぶ私の顔と。
___そして、世界が暗転する。
◇ ◇ ◇ ◇
「…あれ、ここは」
ぱちり。目を開けば、夢の世界から現実に引き戻される。
視界に広がるのはあの地獄絵図ではなく、何の変哲もないただの夜空である。
「…うーん、星がきれい。 東京の空はこんなに綺麗に星が見れたっけ?」
現実逃避するように天を仰げば、いっそ憎たらしささえ覚えそうなくらいに満点の星空が視界いっぱいにうつる。
視界に収めきれないほどの星たちは、まるで私の存在なんて取るに足らないちっぽけなものだと主張するようだ。
そりゃあ、夜空の星に比べたらただの人間なんて随分小さい。そもそもヒトなんて、夜空の星と比べるまでもなく、小さくて弱い生き物なのだ。すぐ死ぬし。
≪はぁ…いつまで現実逃避しているんだい、A≫
なんて、思考を明後日の方向に巡らせていれば、脳内に慣れ親しんだ声が響いた。
声音から、呆れるように肩をすくめる鬼の姿が容易に想像できてしまう。
「ほら、空は繋がっているって言うじゃない? 今頃真昼やグレンも遠いどこかでこの空を眺めているのかなー、なんて思ったり、ね」
≪なわけないだろ。 君、ここに来てもう数日経つだろう? …いい加減現実と向き合いな≫
「…そうは言っても、ねえ」
空は満天の星空。周りは見渡す限りに木が生え渡り、人のいる気配はしない。
動物の鳴き声、虫が飛び交う音、木の葉の揺れる音…耳に入ってくるのはそういった自然の音ばかりである。
こんな偏屈な場所にいる経緯を思い出すためにも、今一度思い出せる限りで記憶をたどろうか。
私の知っている世界はこんなにのどかで平和な場所ではなかったはずなのだから。
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ポチ(プロフ) - にゃけいさん» コメントありがとうございます! ああぁ、すみません…おばあさまは、残念ながら…もう、もう…! 泣いていただけて作者もおばあさまも喜んでおります、ありがとうございます。゚(゚´///`゚)゚。 (2021年4月14日 0時) (レス) id: fa11ea0a31 (このIDを非表示/違反報告)
にゃけい - お祖母様がア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ 泣いちゃったじゃんかあああ〜 (2021年4月12日 0時) (レス) id: 6b9d02d201 (このIDを非表示/違反報告)
ポチ(プロフ) - 海月さん» コメントありがとうございます! わぁああありがとうございます…!!私も両作品大好きなので、これからも応援していただけるようコツコツ更新頑張りますね!温かいお言葉が何よりの活力です、ありがとうございます! (2021年4月9日 21時) (レス) id: fa11ea0a31 (このIDを非表示/違反報告)
海月(プロフ) - コメント失礼します!終わセラと鬼滅どっちも好きなんですよね!だからこの作品とても素敵です!好きです!いつまでも応援してます!更新頑張ってください! (2021年3月23日 23時) (レス) id: 35dd37fd2f (このIDを非表示/違反報告)
ポチ(プロフ) - 柊姉妹尊い!さん» コメントありがとうございます!遅くなって申し訳ありません…。ゆっくり更新していきますね!大変長らくお待たせいたしましたm(__)m (2021年3月10日 19時) (レス) id: d4a5824d33 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ポチ | 作成日時:2020年5月13日 0時