空九日目 ページ9
ピンポーン、とチャイムが鳴る。
「あ、お姉さんだ！」
ばたばたと廊下を走り、玄関に向かう。
「はーい」
ガチャリとドアを開けると、そこには“お姉さん”がニコニコと笑って立っていた。
サラサラの長い黒髪、少し釣り気味の綺麗な目。
泣きぼくろが特徴的な美人の彼女は、度々遊びに来てくれた。
「久しぶり。散歩行かない？」
「行く！」
食いつくように答えたわたしを見て、またくすくすと笑う。
「じゃ、行こっか」
緩く手を引かれ、わたしは歩き出した。
「着いたよ〜」
お姉さんに釣られて足を止めれば、そこには朱い鳥居。
かなりこじんまりとしていて、言われなければ素通りしてしまいそうだが、神社のようだった。
「ここ？」
「そ。上ろっか」
上まで続く長い長い石段を登りながら、お姉さんはのんびりとした口調で話す。
「ここはねぇ、穴場なんだけど、大好きな場所なの。ほら、もう上まで着きそうだけど、本当に素敵だよ」
やっとのことで上り、一番上の段に腰掛けると。
「うわぁ、素敵……」
「ね、でしょ」
木の間からきらきらと溢れる木漏れ日に引かれて上を向けば、空のかけらをたくさん集めたようにも見えた。
「前にさ、木がかかってるのもいいね」
そう言うと、お姉さんは目を輝かせた。
「わかる！？落ち着くよね〜！」
急に子供っぽくなったお姉さんに、思わず頬が緩む。
「そういえば、お姉さんって名前あるの？」
「わたし？わたしはね、________。」
「……あれ？」
気がつけばわたしは、机の上に突っ伏していた。
近くの窓からは日が差し込んでいる。
「寝ちゃった、のか……」
目を擦りながら考える。
あの時、お姉さんは何と言ったのだろう、と。
わたしは薄々思っていた。
お姉さんは、私の創り上げた人物なのではないか。
実際は消えたのではなく、そもそも存在していなかったのではないのか。
「……ま、いっか。」
ぱちん、と頬を両手で挟む。
別にいい。そんなことは、判らなくったって。
わたしが思い出だすのは、楽しかった日々だけなのだから。
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ねこる。 - えるさん» コメントありがとうございます！わたしの小説で心が透明になるだなんて嬉しい限りです…。もっと色々な表現ができるよう頑張ります！ (2021年10月26日 7時) (
レス) id: b433a40741 (このIDを非表示/違反報告)
ねこる。 - まめふなさん» ありがとうございます！レス遅れてすみません…。お話素敵って言ってもらえて嬉しいです！頑張ってラストまで書きます！ (2021年10月26日 7時) (レス) id: b433a40741 (このIDを非表示/違反報告)
える - なんか単純に綺麗って言葉が出てきました。空の美しい描写、主人公さんたちの感情表現の書き方が綺麗だと思いました。このお話を読んでる間は心が透明になってる感じでした。作者様の書き方尊敬致します。 (2021年10月17日 7時) (レス) @page27 id: cbb903ca6b (このIDを非表示/違反報告)
ねこる。 - 丙ののののさん» コメントありがとうございます！空の描写はめちゃめちゃ時間かけたので、そう言ってもらえると嬉しいです…。今後も感激してもらえるよう頑張ります！ (2021年8月16日 8時) (レス) id: 035a026afe (このIDを非表示/違反報告)
丙のののの(プロフ) - 1話目を読み終えたところなのですが…これは…空の描写が美しすぎますね…！くどくないのに美しい情景が伝わる描写…占ツクで初めて見つけました。感激！ (2021年8月15日 22時) (レス) id: 4482ed7f20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ねこる。 | 作成日時：2020年6月5日 8時
