空十八日目 ページ18
封筒を開くと、何枚かの便箋が折り畳まれて入っていた。
すっ、と開くと、懐かしい文字が並んでいる。
それは、確かにわたしに漢字を教えてくれた、お姉さんの字だった。
「お姉さん……」
数秒目を瞑り、やっと気持ちが固まる。
そしてもう一度、手紙に目を移した。
『君へ
この手紙はわたしが死んでから渡すように頼んでいるから、これを読んでいる頃には私はいないんだろうな。
それから、この手紙は君が辛い時に渡してほしいとも頼んであるから、君は今とても辛い想いをしているんでしょ。
言いたいことはたくさんあるんだけど、なるべく最後まで読んで欲しいから頑張ってまとめるね。
まず、そんな辛い時に話を聞いてあげられなくてごめん。この世に大した未練はないけど、それだけが心残りです。
君は私にそっくりだから、きっと悩みを相談できるような友達も少ないんじゃない?
だけどね、君が思うより、ずっと世界は簡単なんだよ。
君が頼れば、助けてくれる人も助けてくれない人もいる。
助けてくれる人の方が多いとは限らない。それでも、どこかにはいる。それだけで一人じゃない。
でもそれってきっと偶然じゃなくて、そんな風にできてるんじゃないかな。少なくとも、私はそう思ってる。
それから、空を見ることはどんな時にも止めないで。
辛い時って、どうしても下を向きがちだけど、それじゃ空は見えない。
どんな時でも、分厚い雲の上には青い空があること。広い世界があることを、忘れないで下さい。
それでも辛くなったら、逃げたっていいんだから。
死ぬ覚悟があれば、なんでもできるよ。
だから死ぬ前に、嫌いな奴に一言言ってやるとか、貯めてたお金全部使って楽しいことするとか、やってもいいんじゃない?きっと楽しいよ。
生きる理由なんて、大層なことはなくていい。ただ、明日はすき焼きだからそれまで生きとこうとか、好きな漫画が完結してからにしようとか、それでいいよ。
最後に。
この手紙はびりびりに破いて捨ててください。私のことは忘れて、楽しく生きてね。
今まで、足枷になってたかもしれない。ごめんね。
辛くても、苦しくても、今日も空は綺麗だし、案外人生も悪くないよ。
わたしはそう思えなかったから強制はしたくないけど、だからこそ君には失敗しないでほしい。
君と過ごした時間は楽しかったよ。また会えたら嬉しいけど、それはきっと叶わないだろうな。
いろいろありがとう。
ばいばい。
お姉さんより』
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ねこる。 - えるさん» コメントありがとうございます!わたしの小説で心が透明になるだなんて嬉しい限りです…。もっと色々な表現ができるよう頑張ります! (2021年10月26日 7時) (レス) id: b433a40741 (このIDを非表示/違反報告)
ねこる。 - まめふなさん» ありがとうございます!レス遅れてすみません…。お話素敵って言ってもらえて嬉しいです!頑張ってラストまで書きます! (2021年10月26日 7時) (レス) id: b433a40741 (このIDを非表示/違反報告)
える - なんか単純に綺麗って言葉が出てきました。空の美しい描写、主人公さんたちの感情表現の書き方が綺麗だと思いました。このお話を読んでる間は心が透明になってる感じでした。作者様の書き方尊敬致します。 (2021年10月17日 7時) (レス) @page27 id: cbb903ca6b (このIDを非表示/違反報告)
ねこる。 - 丙ののののさん» コメントありがとうございます!空の描写はめちゃめちゃ時間かけたので、そう言ってもらえると嬉しいです…。今後も感激してもらえるよう頑張ります! (2021年8月16日 8時) (レス) id: 035a026afe (このIDを非表示/違反報告)
丙のののの(プロフ) - 1話目を読み終えたところなのですが…これは…空の描写が美しすぎますね…!くどくないのに美しい情景が伝わる描写…占ツクで初めて見つけました。感激! (2021年8月15日 22時) (レス) id: 4482ed7f20 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ねこる。 | 作成日時:2020年6月5日 8時