『こっち来て』 ページ46
【Aside】
サヨ「じゃあ、あたし帰るわね。」
「あがっていい」って言われた佐野くんがお店の奥に引っ込んだ後、
サヨさんが静かに席を立った。
『えっ。もうですか？
待ってください、あたしまだ…、』
全部飲みきれてないです、って言おうとして
サヨさんの声に遮られる。
サヨ「あなたはここにいなさい。
話さないといけないことあるでしょ。」
えっ？ってきょとんとしたまま、既に立ち上がったサヨさんを見上げる。
サヨ「何の為にここに連れてきたと思ってるの。」
その言葉に、
長い付き合いの先輩が言わんとすることに気付く。
気づいてるんだ、サヨさん。
あたしの気持ちも
その相手が佐野くんだっていうことにも。
そして
ずっとうじうじしてるあたしの背中を押そうとしてくれてる。
もう、自分から逃げないように。
『はい』って決心したように頷くと、
サヨさんは呆れたように眉を下げて笑った。
サヨ「特別よ。
今日はかわいい後輩の送別会なんだから。」
そういうと、残ったカクテルを一気に飲み干して
「せっかくのカクテル、品のない飲み方をしてごめんなさい」ってバーテンダーさんに声をかけると出口の方に身を翻した。
『サヨさんっ』
呼び止めた声に、サヨさんが足を止めて
少しだけ振り向く。
『…どうしてわかったんですか。彼だって。』
そんなに直接的な話はしてないはずなのに。
お店に連れてこられたときから考えていた疑問をぶつける。
すると、
サヨ「わからないはずないでしょ。
わかりやすいんだもの、Aちゃんて。」
そう言うと、今度こそ振り返らずに
お店を出て行った。
『佐野くんっ』
勇気を出して佐野くんに声をかけた。
明らかにそそくさと帰ろうとしてた佐野くん。
もしかしたら無視されちゃうかもしれない。
でも、
ここでまた何もしなかったら
今度こそもう二度と会えない。
サヨさんのしてくれたことも無駄にしちゃう。
そう思って勇気を振り絞って呼び止めた。
そしたら、佐野くんがびくって立ち止まって
『…佐野くん。』
もう一度声をかけると、
ゆっくりと振りむいて
今日、二度目の目が合った。
『…こっち来て。』
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 418人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
りな(プロフ) - はじめまして！久々にすごく引き込まれるお話です！玲於くんと彼女さん、亜嵐くんがどんな答えを出すのかドキドキしてます。更新楽しみにしてます(^^) (2018年6月5日 2時) (
レス) id: 12a3518566 (このIDを非表示/違反報告)
くる(プロフ) - ぴなたまごさんこんにちは！久しぶりに更新されてほんとに嬉しいです（ ; ; ）ぴなたまごさんの作品全作読ませていただいているのですが玲於くんファンってこともあって全部好きです！！このお話も大好きなのでこれからも更新たのしみにしてます！頑張ってください！ (2018年6月3日 10時) (レス) id: b57c603971 (このIDを非表示/違反報告)
まぁ(プロフ) - やっぱりすごいです、お話に引き込まれます。更新…！嬉しいです。また続きを楽しみに待たせていただきます！ (2018年6月1日 20時) (レス) id: 3f78a71996 (このIDを非表示/違反報告)
reona(プロフ) - 更新されてないみたいですが、何かあったのでしょうか？更新楽しみにしてます！ (2017年11月13日 2時) (レス) id: a813d90c31 (このIDを非表示/違反報告)
ももぷりん(プロフ) - 会いに来てください〜！うぇるかむです！大好きですこのお話（ ; ; ）更新来るたび飛び跳ねてます！ぴなたまごさんのお話全作好きです、玲於くんと結ばれたらいいなあ、、 更新楽しみにしてます！がんばってください ！ (2017年8月26日 23時) (レス) id: b57c603971 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぴなたまご | 作成日時：2017年8月19日 15時
