＊ ページ41
その食器棚には、各職員の愛用の品々が収納されている。それらは、デザインがシンプルなカップや凝ったキャラクターが描かれたカップなど様々。更には某有名カフェのロゴ入りタンブラーなども存在し、皆が気ままに利用しているのだ。そんな棚に、Aの視線は釘付け状態。
「どうしたんだ？」
「あっ、降谷君！無いの..」
飾りガラスを用いた食器棚。そのガラスの艶やかな表面には、肩を並べて話すAと降谷が映し出されている。ガラス越しの2人。その距離は近い。
マグカップを一つずつ手に取る彼女の動作が
ある事を降谷に教えてくれていた。
「僕のカップだろ？」
「そうなの...何処にも見当たらなくて。おかしいなぁ、つい最近まであったのに..」
「あぁ、悪い。それなら落として縁が欠けたから、処分したんだ。Aには、言っておけば良かったな。」
「えっ、そうなの？どうしよう..コーヒー。降谷君、自販機のコーヒーでもいい？」
「嫌だ。」
他の妥協案、その他の追随を断固として許さぬ
降谷の強い意志。もう一度、それをAに伝える。
「言っただろ、Aに入れて欲しいって？」
自惚れて良いのだろうか？
こんなちっぽけな事で..
他の者になど知られたら笑われてしまいそうだ。
Aの胸中、そこには小さな淡い桃色の波が立ち始めていた。
降谷のわがままは珍しい。
Aは、なんだかぽかぽかと心地よい感情が湧き出て来るのを確かに感じていた。でもそれは、ここ給湯室でお湯を沸かしているからだと結論づけようとしたが駄目だった。何故なら利用していたのは、ヤカンではなく熱さを感じさせない電気ポットだから。
降谷と過ごせる限られた僅かな時間..
Aのささやかな喜び――
あぁ..
こんな感情を抱くのは、貴方だけ..
降谷君だけなの。
「じゃあ、コーヒーAのカップに入れてくれよ。」
「ピ、ピンクだけど？」
「別に問題無い。」
「だ、だって、これ “ ケブンイレブン ” のおまけの品なんだよ？」
それは、降谷にはちっとも相応しくないチープなゆるキャラのデザインかつ、明らかに女物を連想させる色合いの代物だ。
「はいはい、分かってるって。それを引き換える為に、コンビニのパンめちゃくちゃ食べてたよな。」
くすくすと笑みをこぼす降谷。彼の深い青の瞳が豊かに形を変えAの姿を優しく包む。
「ケチケチするな、使っていいだろ？」
給湯室がこんなに暑いのは、きっと彼の所為だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 682人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぷぅ(プロフ) - うわぁ、新人に降谷さんが好きですって言えなくて新人の恋愛に協力して下さいって言われたら私だったらこう言ったら｢何でですか？｣って理由を聞かれるだろうけど｢ごめん、無理｣って言っちゃうだろうなぁ(ノдヽ) (2019年11月7日 12時) (
レス) id: b4f5c0261e (このIDを非表示/違反報告)
カラ松ガール(プロフ) - うわっめっちゃいい所で！更新待ってます！大好きです！ (2019年11月5日 23時) (レス) id: addc97a0c8 (このIDを非表示/違反報告)
ぷぅ(プロフ) - ヒロインが降谷さんの好きな人って分かったら婚約者(振られてるから元婚約者になるのかな？)きれいな顔をしておいて降谷さんにヒロインの事を幻滅させるような何かひどいいじめみたいな事して来そうで怖いから近づきたくない( ´-ω-) (2019年10月14日 12時) (レス) id: b4f5c0261e (このIDを非表示/違反報告)
ぷぅ(プロフ) - うわぁ、好きな人が婚約者と話してる所を見るの嫌だし、その間に入るのも嫌だなぁ( T∀T)私なら仕事があるからとかって言って逃げちゃう( ＞Д＜；)でも降谷さんはヒロインを呼んでどうするんだろう？( ´△｀) (2019年10月14日 12時) (レス) id: b4f5c0261e (このIDを非表示/違反報告)
蘇澳(プロフ) - とっても素敵な文章と内容で、時間を忘れてずっと読んでいました！凄く続きが気になります！応援しています！ (2019年9月8日 9時) (レス) id: e4a4be21c3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ポポロン | 作成日時：2019年6月15日 12時
