今の俺 YG side ページ49
長い間一緒にいる弟のラブシーンってやつを、この目で見ることになるとは思わなかった。
…しかもその相手が、俺の感情を引き摺り出す奴なんて。
戻ればいいのに、咄嗟に隠れて聞き耳を立てる自分が嫌になる。
一瞬だったけど本当に絵になってた。
俺とじゃ、ああは映らないななんて…何をバカみたいなこと思ってるんだか。
…さすが演技ドルだよテヒョン。
映画のワンシーンみたいなこと、日常でやってのけちまうんだから。(そして酷く様になるからたちが悪い)
地面に吸い寄せられるようにズルズルと座り込んだ俺は、Aがこっちに来るのにも気付かなかった。
「オッパ?」
YG「……!!」
「気分悪いんですか?!」
“機嫌”なら悪いと答えてやろうと思ったけど、そんなダサイ八つ当たりしたってこの渦巻いた感情が消えるわけでもないし、困らせるだけだ。
時差ボケだなんて意味の分からない返事をした俺を、訝しげに見ながら隣に座るAはまだ目が赤かった。
「ちゃんと食べてますかオッパ」
YG「…お前が言うかよそれ」
「日差しの強い所に行っても、白いままなんですね?」
YG「…だからお前が言うかよそれ」
「…オッパ」
YG「謝んなよ」
「え…」
YG「お前とやれて本当に楽しかったし、いいものが出来たと思ってる。残りの活動期間だって期待してるから俺に全力で見せろ」
「…はい、必ず期待に応えます」
YG「いい返事」
頭を撫でてやれば嬉しそうに笑うA。
こういうところ可愛いと思うし、笑顔が好きだと思う。
…だけど、テヒョンの手を握りながら話した時のあの顔が、俺は頭から離れない。
「オッパ…?」
YG「…あ?」
Aの不思議そうな声で現実に引き戻されると、俺はなぜかAの手を握っていて。
何してんだと離しそうになったのもつかの間、それが惜しくてさらに力を込めた。
“俺とじゃ、ああは映らない”と思っても、“じゃあここで終わり”って出来ないんだよ、もう。
指を絡めたAの手を引き寄せて手の甲に軽くキス。
驚いたAの顔は泣いていた目よりも赤くなって…それが俺を満足させた。
YG「俺は殊更好きなものに関しては…諦めが悪いんだよ」
今までそう生きてきたから…これからだってそれは変わらない。
絡めてた指を解くのはやっぱり惜しいけど、笑って立ち去ってやる。
これだって、映画のワンシーンみたいだろ?
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作者名:クレア | 作成日時:2017年4月30日 13時