忘れな草の恋 11

11-15 アホたれ ページ15

■ RiKu ■

Aの家に着いてｴﾚﾍﾞｰﾀｰが下りて来るのを待っていたら後ろに人の気配を感じた。

思わず振り向いてしまったら、そこには男が立っていた。

振り向いた手前軽く会釈すると、男からも爽やかな会釈が返って来た。

この人どこかで見た事がある気が…。

あ、この子ｼｳｫﾝくんじゃないか？多分合ってると思う。

一緒にｴﾚﾍﾞｰﾀｰに乗り込んで俺は10F、ｼｳｫﾝくんは11Fのﾎﾞﾀﾝを押した。

「ぶしつけですが、ｼｳｫﾝさんですよね？」

「はい。そうです」

「やっぱり。Aがお世話になったみたいですね。ありがとうございました」

頭を下げると、ｼｳｫﾝくんは目を大きく見開いて身体の前で大袈裟に両手を振る。

「いえいえ、そんな！僕の方こそ！」

名刺入れを出そうとした所でﾀｲﾐﾝｸﾞ悪くｴﾚﾍﾞｰﾀｰの扉が開いてしまった。

「あ、しっかりとしたご挨拶はまた後日改めます・・すみません」

「はい。Aによろしくお伝え下さい」

ｼｳｫﾝくんは扉を閉める時に軽く頭を下げていた。

何とも爽やかで礼儀正しいな。何より男前だった。

家に入るとAじゃなくｲﾁ兄が朝食をﾃｰﾌﾞﾙに並べていた。

『おはよう！今日はｲﾁ兄が作ったんだ。Aは？』

『ﾊﾞﾙｺﾆｰにおるから呼んで来てくれるか？』

考え事かと尋ねたらｲﾁ兄は肩を竦める。

『昨日、あいつ話してくれた？』

『頑固なやつやからなぁ』

やっぱな。ｲﾁ兄にも話さないだろうなとは思ってたが…。という事は余程の事があったのは確定だな。

『そや、昨日噂のｳﾆｮｸくんに会ったわ』

『そうなの？どうだった？』

『良い子やったで。それに面白かったな』

ふーん、そっか。ｲﾁ兄が言うんだから間違いないよな。なら俺が見定める必要もないか。

ﾊﾞﾙｺﾆｰの扉を開けて声を掛けると、振り向いたAは、おはようと言って微笑んだ後で少し怒った顔を作る。

『何？どした？』

『ﾘｸのアホたれ！お兄に余計なこと言うてからに・・』

俺が笑うとAが、んもーと唸りながら腕を叩いて来た。

『ごめんって！だってお前が俺に嘘つくから！言っとくけどバレバレなんだからな！』

『う…そじゃないもん』

まだ言うか。・・お前こそアホたれだよ。

『で、ｲﾁ兄にも話さなかったんだって？』

『・・・さてと、ご飯食べよーっと』

Aは分かり易く話を逸らして俺の腕の下からﾋｮｲｯと部屋の中に入って行く。

『おいこらっ！A！』

11-16 噂のあいつ→←11-14 返事

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す