【占ツク】人気作者の光と影

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【視点：薔薇子】

　こうして惰礼こと私と麗鎖の攻防は表面上のみ収束した。

　しかし、この一件は波紋を呼ぶことになる。
　以前まで少人数で書き込み頻度も少なかった掲示板に多くのユーザーが押し寄せてきた。麗鎖の信者による惰礼への攻撃、私と同じく麗鎖を怪しむ人の書き込み、荒らしの愉快犯など、書き込み数が急激に増えていった。

　あの騒動のおかげで、多くの人が麗鎖についての考察を書き込むようになっていった。擁護の声もあれば、疑いの声もある。しかし、元々「麗鎖」というユーザーを知らなかった人からすれば、どちらが信用できるかわからない。よって、そういった人達は中立派として慎重に情報を集め、真実を確かめる風潮になっていった。

　掲示板では一番冷静な中立派が権威を持つようになり、麗鎖についてバランスの取れた考察がまとめられるようになった。惰礼のホムペは上手く機能したのだ。どうせ惰礼の正体が「薔薇子」というユーザーだとはわからないし、一時の捨て駒のようなものだ。

　私は掲示板で惰礼として麗鎖の情報提供を続けていた。私は感情的にならないように細心の注意を払って書き込むので、中立派の人達とも良い関係を築くことができた。

「あとは決定的な証拠なんだけどなあ……」

　いくら良い関係とはいえ、証拠がないと中立派の人達の結論を決定づけられないし、擁護派に納得してもらうこともできない。私は歯がゆい気持ちで惰礼の作品一覧を眺めていた。

――最近は自分の創作や他の人の作品巡りができてないなあ。

　ふと、彼女の作品一覧を見てそんなことを思った。最近はずっと麗鎖を追っていたから、自分が二次創作を楽しむことを忘れていた。私は何のために占ツクにいるのだろう。これじゃあ本末転倒だな。

　私は検索ボックスに好きなアニメの題名を入力し、検索をした。色んな人の夢小説を読んで気分転換しよう。そうだ、新作だけじゃなくて、埋もれた古い作品も発掘してみたい。少し明るくなった気分で、私は心地よい文字の海に潜った。

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