10 ページ10
いつかどこかで、聞いたことのあるようなやりとりやった。
記憶をたどるうちに、昨年の文化祭準備期間中のことがよみがえってきた。
『あれはたしか、崇裕と重岡くんの…』
ﾟ+o｡◈｡o+ﾟ+o｡◈｡o+ﾟ+o｡◈｡o+ﾟ+o｡◈｡o+
大 『サビ終わりのコード、前のと同じになってるで。それ、望美さんの癖やろ？』
崇 『え…。あっ、理解した。』
大 『無自覚なん？気いつけり。』
ﾟ+o｡◈｡o+ﾟ+o｡◈｡o+ﾟ+o｡◈｡o+ﾟ+o｡◈｡o+
チリッ、チリッ…。
ああ、まただ。例の感覚がやってくる。
周囲の音が消える代わりに、自分の鼓動の音がやけに響いて聞こえた。
望 「言ってくれてありがとう。クセって、なかなか自分じゃ気づけへんからな。」
崇 「どういたしまして。俺もシゲに、あ、ベースのやつな、あいつに言われて気付いたんやけど。なんか望美のクセがうつってもうたみたいで。」
望 「えー、私のせいなん？濱ちゃんと私、やっぱり感覚が似てるんやで。」
音が戻ったと思ったら、聞こえてきた会話にドクンと鼓動がはねた。
『望美さんは感覚が似てるって言ってたけど…』
それ以上に、二人は同じ方向を見てるんやと思う。
今も付き合ってたなら？
もう一度やり直したなら？
どうなってたんやろうな、なんて他人事のように考えてしまうのを止められへん。
浜中 「あんたら、ええコンビやな。そういや桐子先生から聞いたんやけど、濱田くんは進学せえへん予定なんやって？」
微笑ましそうに見ていた浜中さんが、ふと何か思いついたように言った。
崇裕は不思議そうにしながらも、迷うことなく頷く。
崇 「はい。上京して、音楽一本でやっていきたいなって思ってます。」
望 「えっ、そうなん？」
『望美さんも初耳やったんや。』
根拠なんてないけど、もう伝えてるんやとばかり思ってたから意外やった。
私が考えてる以上に、崇裕は望美さんと距離を取ってたみたいや。
浜中 「ちょうどよかったで。」
望 「…浜中さん？」
望美さんがいぶかしげに浜中さんを見る。
対する浜中さんは、なんだかとっても楽しそう。
浜中 「どうかな濱田くん、いっそ望美とアメリカに来たらどうや？」
アメリカ─。
たしかに浜中さんはそう言った。
崇裕にも、同じように聞こえたらしい。
ポカンとしたまま「アメリカ？」って、オウム返しに呟いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 22人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：真奈美 | 作成日時：2018年4月22日 0時
