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1階の応接室から、最上階の視聴覚室へ。
私はひたすらに駆け上がった。
まだ帰らないでって、メッセージ一通、電話を1本やればよかったんやけど。一分一秒でも速く、ありのままの自分の気持ちを声で伝えたかった。
勢いよくドアを開けると、まだ崇裕が残ってくれてた。
私の姿を見て、太陽みたいに笑いかけてくれる。
崇 「Aなら来るって信じてたで。」
「······ごめんね······崇裕、ごめんね」
しっかり伝えないといけないのに、涙が溢れて、肩で息をしてるから、途切れ途切れになってまう。
それでも崇裕にはちゃんと伝わっていて。
光を多く含んだ瞳が、笑いかけてくれる。
私の大好きなくしゃっとなるあの笑顔で。
1歩ずつ崇裕が近づいてくる。それに合わせて私も1歩ずつ前に進む。
すぐ目の前まで距離が縮まって······。
どちらからともなく手が伸び、お互いを抱きしめた。
「私な、さっき、望美さんと約束してきたんや」
崇 「······うん」
「私にも新曲を一緒に歌わせてくださいって」
崇 「······うん」
お互いの心臓の音を感じながら、私は決意を打ち明けてく。
崇裕はますます腕の力を強くして、震える声で優しくうなずいてくれる。
その度に私の大好きな香りが私の心を落ち着かせてくれる。
「あの歌で、望美さんを送り出そう」
サヨナラするためやない。
また会おうねって、約束するために。
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作者名:真奈美 | 作成日時:2018年4月22日 0時