16〜崇裕said〜 ページ16
あの小瀧望美が、アメリカに行く───。
俺とAが直接本人から聞いた翌日、正式発表を聞いた月虹はすごい騒ぎやった。
いや、ウチだけやない。テレビでも、ネットでも騒がれてて、、その流れで文化祭のライブの話題も取り上げられる形になっていた。
チケットはとくに売り切れてるのに、職員室の電話がジャンジャン鳴り響いてるらしいや。そもそも招待券がないと学校の敷地にだって入られんようなってるから、物騒な書き込みも目に入ってくる。
崇 『騒ぎになるってわかってたやろうに、なんでこのタイミングで発表したんやろ？』
答えはたぶん、浜中さんのあの言葉や。
しげと買い出しから戻ると、視聴覚室にAの姿がなくて、不思議に思ってたら、浜中さんから電話があった。
崇 「え？Aとデート中？」
文 「大丈夫やで、望美は変装してるから。」
崇 「や、そういう問題じゃ…。もう文化祭まで日がないのに、何やってるんすか？」
文 「だからやで。文化祭のあと、長期の仕事が控えてるんや。その前に故郷を自由に歩かせてあげたいし、何よりお父さんのことがね…」
望美の家が離婚係争中なのは、すでにテレビで報じられたから知ってる。
いよいよ離婚が決まったのかと思ったら、斜め上の事実が投げ込まれた。
文 「今入院中で、もう余命いくばくもない状態なんやって」
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大 「…い、おい……おい！濱ちゃん、聞いてんか？」
プールから上がったみたいに、いきなり音が戻ってきた。
ガタンッとイスを揺らして、俺は声の主を見る。
崇 「…あ、しげか…」
大 「なんや、そのまぬけ面。寝不足でぼんやりしてまったか？」
崇 「本番前やからな。今回はゲストもいるし、多少は緊張してるで。」
大 「なあ、ハッキリ言えよ。この状況、さすがにヤバいと思ってんやろ？」
プログラム曲は完璧やった。
メンバーとのリハーサルは今日までに充分重ねてきたし、納得もいってる。
崇 『問題は新曲なんやよな……』
結論から言えば、Aは降りた。
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作者名：真奈美 | 作成日時：2018年4月22日 0時
