14〜望美said〜 ページ14
あとはもう、あっという間や。
文化祭のライブに来てくれて、友達になれて。
冬が過ぎて、春が過ぎて──。
夏がする前に、私は音楽の道を歩いていくことを決めた。
濱ちゃんにも告げず、たった一人で。
浜中さんに見出された途端、音楽以外のことが意識から抜けていった。
まだ不安定な「弟」を突き放すと分かっていても、傍にはおられんかった。
いつ言おうか迷っているうちに、最後の最後まで黙っておった。
もっと上手く、傷つけへん方法は、いくらでもあったんやと思う。
結局私は、自分が一番可愛かったんや。
音楽に没頭することで、救われたがってたんや。
しばらくして、濱ちゃんからのPCのアドレス宛に一通のメールが届いた。
添付ファイルのタイトルは『RE:泣き虫カレシ』やった。
震える指でクリックすると、スピーカーからは返事が流れてきて…。
望 「ありがと」
その言葉を繰り返し聴いて、聴いて…。
私はもう振り返らないって決めたんや。
・*:..。o♬*゚・*:..。o♬*゚・*:..。o♬*゚・*:..。o♬*゚
翌朝、珍しく浜中さんの運転する車に音楽がかけられていた。
それも、私以外の曲が。
望 「…濱ちゃんのやつだよね。この前も聴いてへんかった?」
信号待ちになったのを見て、運転席に声をかける。
浜中 「デモテープを聴いて会いたいと思ったのは、あんた以来やで。」
後部座席からルームミラーに映る浜中さんの表情は、今にも鼻歌を歌い出しそうやった。
浜中 「直接会って、生の声を聴いて、確信したで。濱田崇裕、あの子は化けるで。」
望 「…浜中さんの気持ちも分かる。でも…少し急ぎ過ぎてへん?」
浜中 「そういうあなたは、18でデビューしたんよな。」
嫌味もなくさらりと言う浜中さんは、さすが出来る男って感じ。
プロとしての覚悟とか、誇りとか、私に教えてくれたのも彼や。
マネージャーとして、敏腕プロデューサーとして。
浜中さんの音楽を聴き分ける耳も嗅覚も信じてるし、私も濱ちゃんの歌にはドキドキする。
可能性が詰まった、眩しい音や。
望 「でも…」
言葉の続きが見つからんくて、視線が下がる。
どないしてこないに気が重いんやろう。
Aちゃんと一緒に笑う、濱ちゃんの笑顔が頭をよぎる─。
浜中 「答えを出すのは、あなたやなくて、濱田くんやで。」
浜中さんの言葉に、私は座席に深くしずみこんだ。
皆さんあけましておめでとうこざいます。
今年もよろしくお願いします。m(_ _)m
22人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:真奈美 | 作成日時:2018年4月22日 0時