12〜望美side〜 ページ12
濱ちゃんとAちゃんが帰った部屋は、広くて静かや。
久しぶりに「寂しい」って感覚がよみがえってきた。
窓から外を眺めるけど、暗くて二人の姿は見えへん。
なんとも言えへん表情を浮かべた自分の顔が反射するだけや。
望 「浜中さん、どないして渡米のこと言ったの？」
浜中 「あの子らには、直接言いたいやろうと思ったからやで。」
望 「…ニュースで知られるよりは、ええかもね。」
浜中 「俺からもええか。入院したお父様を見舞うために、こっちへ戻って来たのはわかる。でも、どないしてわざわざ母校でライブを？それに新曲まで用意して。」
いまさら、その質問？
スケジュール調整に奔走してくれている間も何も言わんかったんに、どうして？
それが正直な想いやった。
真意をはかりかねて浜中さんを見つめるけど、相手からも探るような視線が返ってくる。
浜中 「そうせえへんといけない気がしたんや。」
こんな曖昧な答えしか言えへんのは、別に何があるという訳やない。
私自身、本当のところなんてわかってないだけ。
浜中さんもそれは予想済みやったのか、小さな苦笑が返ってきた。
望 「ところで浜中さん──濱ちゃんのこと、本気？」
言うつもりはなかったのに、ぽろっと口からこぼれた。
自分でも驚いて、やってもうたと頭を抱えそうになる。
浜中 「本気やで」
浜中さんの声は、何かの判決のようにズシンと重たく響いた。
浜中 「正確には『濱田くんの才能に』本気やで。」
私はなぜか重苦しい気持ちになって、押し殺すようにため息をもらした。
たぶん私は─あの頃の自分と同じ選択を迫られる濱ちゃんを、そばで見ているのが苦しいのだ。
それからはもう、いつも通りやった。
明日のスケジュールの再確認をして、浜中さんが隣の部屋に帰っていく。
湯船に浸かって、筋トレとストレッチをして、そのままベッドに横になる。
普段と違うのは、すぐにまぶたが落ちてきたこと。
そして、随分久しぶりに夢を見た。
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作者名：真奈美 | 作成日時：2018年4月22日 0時
