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望 「浜中さん!その話はまだオフレコでしょ?」
浜中 「明日の正午には発表なるんやし、二人のことは信頼してるんやろう。」
また、音が遠くなる。
鼓動はさっきよりもずっと速くて、痛いくらいや。
『望美さん、ホンマにアメリカに行くんや…』
実のところ、噂だけなら以前からあった。
海外のフェスでも大人気やったし、望美さん本人もインタビューで意欲的なコメントをしていたから、ファンなら薄々気づいてたと思う。
崇 「望美すごいな、海外かぁ…。にしても浜中さん、冗談冴えてますねー!」
崇裕は、フリーズした時間を解凍するように大きな声で笑ってる。
場をとりなすように、ごく自然に。
でもかすかに声は震えて、うわずっていた。
浜中 「冗談なんかやないで。君が歌ってる音や動画はチェックしてる。話題の高校生バンド『BOYS』のギター兼ボーカル、濱田崇裕くん。」
浜中さんは、崇裕を試すように見つめて言った。
対する崇裕は目を見開いて、それから噛み締めるように笑う。
崇 「そんな風に言って貰えて…嬉しいです。」
望 『濱ちゃんと私、やっぱり感覚似てるんやで。』
浜中 『どうかな濱田くん、いっそ望美とアメリカに来たらどうや?』
望美さんと浜中さんの言葉が、頭の中で延々ループする。
こないな時、私に出来ることは──。
私、なんて言えば─…。
「と、とにかく!時間もないですし、新曲のアレンジを決めましょう。」
望 「そうだね…。Aちゃん、キーボードはどうしたい?」
突然ボールが回ってきて、私はとっさに表情を作れんかった。
崇裕と望美さんが、心配そうにこっちを見ている。
「…あの、その前に、お茶でも淹れませんか?」
備え付けのケトルが映っただけの、ただの思いつきや。
でも、崇裕と望美さんは、息もぴったりに手を叩いた。
崇 「さすがやな!なんか足りんなと思ったら、それや!」
望 「せやな。スイーツあるし、マカロン、クッキー、ギモーブ、どれがええ?」
崇 「なんでそないに常備してんの!?いくら太りにくい体質やからってさー。」
望 「何よ!濱ちゃんやって、太りにくい体質のくせに!!ねぇ、Aちゃん?」
「ホンマに。女子の敵ですね。」
望美さんに加勢して崇裕が泣き真似とか始めた。
浜中さんが準備してたら、「芸人の方が向いてるな」って言い出した。
部屋中、賑やかで和やかな空気になった。
『私、笑顔になれてるかな?』
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作者名:真奈美 | 作成日時:2018年4月22日 0時