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夏休みが終わって文化祭まで、あと1週間。
放課後になれば、校舎のあちこちが戦場化していた。
そんな中、視聴覚室の開けた窓から、にぎやかな声が聞こえる。
私は、家庭科部と軽音部の掛け持ちで寝不足の日々。
やからって、絶対に手を抜く訳にはいかんのや。
やって、あの望美さんが!!わざわざライブをしに来てくれるんやから。
「崇裕、遅いな…。早よアレンジ決めたいのに。」
夏休みが開けてから、週二のペースで先生から個人面談を言い渡されていた。
『理由は…やっぱあれだよな。』
チラッと壁にかかった時計を見たら、もうすぐ1時間が経とうとしてる。
家庭科部に顔を出そうかとイスを立つと、突然ドアが開いた。
崇 「ごめんな!遅なって。」
ダルそうに歩きながら、崇裕が疲れきった感じで入ってきた。
「お疲れ様。先生、今日は何やったん?」
崇 「それがな、前回と同じ内容。深刻な顔で「卒業後は上京して、歌一本でやっていくのは、ほんまか?ほんまか?」って。」
「すごい!!ものまね上手!!」
崇 「…それ、先生にも言われた。ドヤ顔で「ミュージシャンってのは、ホンマに狭き門や。お前の場合、アイドルか芸人を目指した方がええんちゃうんか?」ってな。」
「ああ、うん。」
先生が言うことも一理あるかもな。
想像したら、なんかめっちゃ似合ってるし。
そないなことを思ってると、崇裕が不機嫌そうに私を見つめる。
崇 「言っておくがな、たこ焼きの被り物を付けてやるとか絶対にやらへんからな!」
「なんやねん、それ?」
崇 「えっ、見たことあらへん?最近デビューしたアイドルがそういうことをするんや。見ると、なんかありやなって思ってな。」
なんや、意外とノリノリやん?
以前の私なら、たぶんそうツッコミを入れてた。
でもずっと間近で見てきて、崇裕が音楽に本気なんやのは分かってるから言葉はのみこんだ。
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作者名:真奈美 | 作成日時:2018年4月22日 0時