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「あんな…」
崇 「あんさ」
貴&崇 「えっ?」
声が重なって、二人揃って目をまたたいた。
次の瞬間、すかさず崇裕くんが続けた。
崇 「ずっと部活に顔出さなくて、ゴメンな。」
「わ、私のほうこそ!ゴメンな。」
崇 「…なんでAが謝んねん。困らせたのは俺やん」
「違うねん。もとはといえば、私が勘違いして…」
続きを遮るように、崇裕くんが大きくかぶりをふる。
崇 「俺さ、あの日…Aにホンマに嫌だって言われて、もう頑張れへんって思ったし…頑張ったらあかんなんやって思ったんや。」
「そのことなんやねんけど!私、崇裕くんに言いたいことが」
もう一度、崇裕くんが私の言葉を奪った。
今度は、強い光をたたえた眼差し一つで。
崇 「でもなシゲから伝言聞いて、最後の可能性にかけようって思ったんや。」
新曲の歌詞を必ず届けるっていうあの言葉を、崇裕くんは信じてくれたんや。だから私が現れるまで、新曲のイントロを延ばしてくれたんや。
「崇裕くんは、どうしてあんなに…」
崇 「──Aはさ、俺と初めて喋った日のこと、覚えてる?」
「え?昨年の後夜祭、だよね…?」
崇 「ああ、やっぱりそういう認識やったんや。」
そう言って、崇裕くんは困ったように笑った。
崇 「俺たちな、もっと前に喋ってんねん。ぶっちゃけると、高校の入学式から。」
「ええ!?なんで、そんな前から…。クラスもちゃうかったのに。」
嘘をついてるようには見えへんし、たぶんホンマなんやと思う。だけど私は、ホンマに、ちっとも、覚えがない。
「式が終わったあと、桜の木の下で電話してたやろ?で、急に泣き崩れてた。」
「あっ…」
崇裕くんの言葉に、記憶の扉が開け放たれていくのがわかった。
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作者名:真奈美 | 作成日時:2017年6月10日 0時