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智子の話は、悲しかった。辛かった。
でもそれ以上に、ようやくわかった真実に胸が締め付けられた。
私は二人が知り合いやったから、崇裕くんが「泣き虫カレシ」を託されたんやと思ってた。
やけどほんまは、そもそも託されたんやない。
あれは、崇裕くんと望美さんのための曲や。
泣き虫が崇裕くんで、ツヨムシが望美さん。
『崇裕くんはずっと、どないな気持ちで歌ってたんやろう…』
ここぞって時にしか披露せんのも。
あんなにも聴く人の心を揺さぶるのも。全部が全部、崇裕くんの望美さんへの想いが詰まってるから。
「走って逃げて…感じ悪かったな。」
呟きは次第に涙声になり、雫がスカートに落ちてシミを作った。
勝手に誤解して、呼び止める崇裕くんを無視して。それからずっと避けてて…
「あんな、智子…。私、サイテーなんや。」
「崇裕くんのこと、チャラい人やって決めつけて…。一緒に曲作るようなって、友達っぽく話せるようになってからも、どうせまた冗談なんやろうなって、なんか言われても全然本気にしてへんかったのに…。」
「そのくせ、二人で買い出しに行った時に『スキ？キライ？』って聞かれたら、私真面目に受け取ってもうて。それで崇裕くんと望美さんの話を聞いて、勝手に裏切られた気になってもうて…。」
「ほんまは私が…私が、崇裕くんのこと−−−」
その後は、声にならへんかった。
智 「…分かってる、分かってるで。Aのほんまの気持ち、気づいてたで。」
そっと智子の手がのびてきて、励ますように頭を撫でられる。
智 「さっき私が言うたこと、覚えてる？過去は過去やで。」
「でも、何を言えばええんかわからへんねん。」
智 「はい、Aの『でも』いただきました！気いつけんと口癖になってまうで？」
「あ…」
ぐっと息を飲むと、智子の手が今度はポンポンと叩いた。
智 「なあ、たまには思い切ってやってみたら？別に見切り発車でも平気やって、実際に走り出したら案外何とかなるもんやで。」
私が答えられへんのを見て、智子がさらに続ける。
智 「Aやって、このままやとあかんやって思ってるんやろ。」
「うん…」
いつまでも崇裕くんを避けてちゃあかん。何も変わらんどころか、状況悪化していく一方になる。
それに−−−。たとえ崇裕くんがどう思ってたんやとしても、私は一緒にいて楽しかった。友達としてなら、もっと仲良うなれるんかもしれん。
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作者名：真奈美 | 作成日時：2017年6月10日 0時
