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「ねえ、先に、どこかでお茶する?少し冷やしたほうがよくない?」
崇 「それって、頭冷やせってこと?Aひどいで〜。」
「あんな、私は真剣に心配してんねん!」
崇 「Aが!俺を心配!どないしよ、マジで泣きそう。」
ダメや。いつも以上に会話が成り立たん。
『っていっても、わざと話をはぐらかしてるようにも思えへんよな。』
なんていうか、ふわっふわしてる感じ?心ここにあらず、上の空、浮き足立ってる?
崇 「とりあえず、最初におつかいを済ませへん?で、その後でお茶にしよ。」
気を取り直したように、崇裕くんが颯爽と歩き出した。
これも素でボケてるのか、それとも今度こそツッコミ待ちなんやろうか。目的地である楽器店の立て看板には、崇裕くんの進行方向とは真逆の矢印が描かれている。
「ええと、崇裕くん。お店、反対みたいやけど。」
崇 「あれ?ウソ、なんでやろう?」
「・・・ねえ。」
崇 「はい、場所交代な。」
日を改めようと提案しようとしたのに、出鼻をくじかれてしもうた。
崇裕くんは有無を言わせず、私の肩を押しのけるようにして右側に移動した。
「なんで?」
崇 「なんでもや!」
ムッとしているのに気づいてないはずないのに、崇裕くんは我関せずといった体や。
だけど、すぐに理由がわかった。
『私が歩いていたの、車道側やったんや。』
それからも、崇裕くんは挙動不審と気遣いを交互見せた。
荷物を持つのを手伝ってほしいから誘われたと思ってたけど、結局全部崇裕くん一人で運んでしまった。しかも、お店のドアの開け閉めさえ、私に譲ってくれなかった。
『これじゃあ、ホンマにデートしてるみたいや。』
現実味がなくて、何を喋ったのか記憶も危うい。
駅まで戻って来た時には、内心ほっとしてしまった。
崇 「お疲れ様。今日は付き合ってくれてありがと。」
「こっちこそ、荷物ほとんど持ってもらっちゃってゴメンな。」
崇 「それは言わへん約束やろ?なんて、Aの律儀なとこも好きなんやけど。」
「・・・っ!」
『やだな、今のは笑って受け流すとこやったのに・・・」
からかうネタを提供された崇裕くんはといえば、なぜか真面目な表情を浮かべている。
急に空気が変わったことに戸惑っていると、小さな咳払いか、聞こえてきた。
崇 「・・・Aに、渡したいものが・・・あるんや。」
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作者名:真奈美 | 作成日時:2017年6月10日 0時