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『あぁ、出来るなら、このまんま回れ右して帰りたい・・・』
翌日、駅前の人混みの中で私服の崇裕くんを見た瞬間、強烈にそう思った。
崇 「A、そのワンピ可愛いな、すごい似合ってるで。」
「・・・ドウモアリガトウ」
崇 「なんで片言なん?もしかして照れてる?」
ご機嫌な様子で笑う崇裕くんを、この上なくうらめしい気持ちで見やる。お世辞やないのかもしれんけど、私にとってはイヤミ以外の何のものでもない。
実況中継するなら、周囲の視線は崇裕くんに集中していた。
制服を着ている姿からは全く別人のようにかっこいい。それを老若男女が二度見していく。
『崇裕くんはそういうの、気にしてなさそうやなぁ・・・』
人に注目されるのはもう慣れっこなのか、極々フツーに歩いてる。というか、今にも鼻歌を歌い出しそうなほどには機嫌が良さそうだ。
崇 「こうして歩いてると、俺ら新婚ぽくない?」
「寝言は寝て言って。」
崇 「住むのは東京か大阪がええな。で、子供は2人!」
「よし、歯ぁ食いしばろうか。」
崇 「なんでさこういう時だけ、めちゃくちゃ笑顔なん?」
情けない声を出す崇裕くんを放置する勢いで、駅を背にしてざっざか歩いていく。
だけど残念なことに、私は今日の目的地を知らへんのや。
「おつかいって、どこで何を受け取ればええの?」
崇 「楽器屋でねぇ、桐子先生の指揮棒と、シゲのピックと・・・なんやっけ、取り寄せ伝票を預かったんやけど・・・あれ?どこや?」
崇裕くんはジャケットを探っているけど、私の目にはズボンの後ろのポケットから紙が見えている。これは、場を和ますためのギャグなんやろうか?
迷ったのは一瞬で、私は紙に手を伸ばした。
「そっちやなくて後ろ。」
崇 「へ?あ、ありがとう。じゃあ、気を取り直して行きますか。」
「どこに?」
崇 「俺らの新居へ!」
まだ言うか!
そうツッコミたかったけど、崇裕くんの顔が真っ赤で言葉が引っ込んだ。
よく見れば、耳も、首元まで赤い。
服装は、皆さんの想像におまかせします!
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作者名:真奈美 | 作成日時:2017年6月10日 0時