スキキライ～Takahiro.Hamada～ (ページ2)

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崇「新入生に告ぐ！あそこで目を潤ませてる如月Aという名の天使は、俺の彼女になるの予定なんで、手を出さんようーに。もちろん、惚れるのもナシやから。」

ありえへん。信じられへん。

なにが、どうして、こうなったんやろう。

全校生徒が集まる体育館の舞台上で、スポットライトに照らされた濱田崇裕が高らかち宣言した。考えられへんタイミングのあるまじき内容に、頭がクラクラして今にも倒れそうや。

ぼう然している私に、ステージ上から諸悪の根源が満面の笑みで手をふってくる。

こうして地味な私の高校生活は、とあるチャラ男のせいで、にわかに騒がしくなることが決定してしまっとのだ。

♫ ♫ ♫ ♫

約一時間前

智子そっち手伝えんくてごめんな。Aのクッキー、楽しみにしてるね(≧▽≦)

クッキーが焼きあがるのを待っていたら、親友の智子からメッセージが届いた。

智子は同じ家庭科部のメンバーで、生徒会役員も務めている。それも、二年生で副会長だ。

今日は、新入生歓迎会で生徒会長と一緒にステージに立つ。

明るく、優しく、自分の意見をはっきり言える智子。

それと比べて、地味で人見知りな私とは、住む世界が違うタイプ。それでも仲良くなれたのは、彼女が毎日声をかけてくれたからや。

A気にせんでいいよ。智子こそ、司会頑張って!あと、クッキーは新入生用やからね。

メッセージを打ち返すと、一息ついた私は窓の外をぼんやり眺めた。

調理室から葉桜を見るのは、これで二回目や。

「今年は開花が遅かったから、入学式は桜が綺麗やったんやろうな。」

丘の上にある私立月虹学園は敷地内にも緑が多くて、校門から校舎まで続く桜並木は、受験生にも人気。私も、案内パンフレットで一目惚れしたんやど。

部長「A、そろそろ焼きあがる？」

ドアが開いて、部長がひょこっと顔をのぞかせた。

慌てて椅子から立ち上がり、オーブンへと駆け寄る。

「あ、はい！あと五分ぐらいです！」

部長「よしよし、それなら余裕で放課後に間に合うね。」

このあと体育館で新歓があり、部活紹介が行われる。そして放課後になると、新入生たちが興味のある部活へ説明を聞きにやってくる。

このクッキーは、彼らへのワイロ・・・やなくお茶うけや。