簡単には言えない 〈忍足侑士〉 ページ10
忍足侑士くん。
忍足くん。
おっしー…？
何度も何度も練習して名前を呼んでみるけれど、結局はいつも変わらないんだよなあ。
「Aさん、はいプリント。」
「あ、ありがとう。」
1週間ほど前に席替えをした。
このクラスになったことだけで嬉しくて仕方なかったけれど、今回はもう天に召されてもいい。なんなら、地獄に落とされてもいい。
それくらいあなたの後ろの席が嬉しかった。
忍足侑士くん、あなたに恋しています。
「Aさんって水色とか青色とかの物、めっちゃ持ってへん？」
「え、そうかな。」
「この筆箱とか真っ青やん。しかもでかい。」
「女の子の筆箱には夢と希望となんか色々入ってるからさ。」
「色は関係ないんかい！不思議な子やなあ。」
忍足くんは意外にもよく笑うし、人をいじるのが好きだということが分かってきた今日この頃。
見ているだけの今までとは大違い。
ただ、変わらないことは、未だに名前すら呼べないこと。
忍足くん、そう自然といえばいいのに。
あたしの口は頑なに動かない。
「な、Aさんって男子テニス部の中で誰を応援してるん？跡部か？」
「いきなりだね…なんで？」
「いやー、不思議っ子Aさんが選ぶ人を知りたいなと思って。」
「好奇心ってことですね。」
「そういうことですね。」
忍足くんは席替えした日から、何でもあたしに聞いてくるようになった。
好きな色、好きな食べ物、好きなタイプ。
そして、好きな男子テニス部員。
そんなのあなたに決まっているのに。
「んー跡部くんではなくって。」
「あれ？意外と歳下好きとか？」
「いや！同級だよ！」
「ほー、まあいっぱいおるし、手っ取り早く言ってみ？」
「あー…」
忍足侑士くん。
何度も練習したじゃない。
頑張れ、あたし。
「なあ、自惚れかもしれへんけど、」
忍足くんの目があたしを見つめる。
眼鏡から覗く綺麗な瞳が。
「俺やったら嬉しいなあって。」
右手で眼鏡をくいっと持ち上げる。
外れた視線にはいつもの余裕な顔がない。
ああ、今なら言える。
「忍足侑士くんだよ。」
戻された視線と緩んだ口元。
そして、いつもの大好きな顔で笑った。
「ほんまに？めっちゃ嬉しいわ。」
やっぱり好きだな。
好きがいっぱい積もっていくな。
「うん、すごく好きなの。」
私もその笑顔に答えるように笑った。
(好き？…ラブ的な？)
(え、いや！違う！違うくないけど！)
(俺も好きやけど)
(へ⁉)
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吹雪 - すみません、真田君の漢字違います。弦一郎です。 (2022年4月17日 13時) (
レス) @page27 id: ac8fe01e1f (このIDを非表示/違反報告)
星華 - もう本当に良かったです！本当にみんなカッコよくて素敵だと思いました！応援してます。 (2018年9月8日 22時) (レス) id: b55a00a283 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀 - サイコーでした！！どの話も内容が濃ゆくて良かったです(*^ ^*) (2015年7月24日 22時) (レス) id: 26a2606d52 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 真優さん» 不二で書いちゃった…笑 イメージが不二でしたの！ (2015年3月19日 13時) (レス) id: 3e05b36322 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - ぱるミンさん» 思い立ったらすぐ行動です笑 るみんちゃんも早速見てくれてありがとう(*´ω｀*) お別れって意外と深いものですね… (2015年3月19日 13時) (レス) id: 3e05b36322 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まる | 作成日時：2015年3月19日 13時
