金木犀の香る頃に〈跡部景吾〉 ページ7
金木犀の香りがふわふわとしてて
朝の空気がちょっぴり冷たくて、セーターの袖を伸ばしてみたり、
今はそんな季節。
そんな季節はあの人を思い出す。
「A。おい、聞いてるか。」
「お、聞いてませんでしたー。」
へへーんと笑うと必ず、ぽかっと頭を叩かれる。
だけど、あたしは知っている。
頭を叩くときに、あたしと同じように幸せそうに笑っているのを。
決して弱さを見せない人だったけど
一緒に幸せだって思ってくれてること、知ってた。
ね、景吾。
「誕生日何がいい？プレゼント。」
「いらねぇ。」
「手作りのセーターとかさ、もっと何かないのですか。」
「ない。」
「もー、じゃあ誕生日お祝いしないからね！」
「Aが行きたがってた公園に行くか。準備しとけ。」
「は？いつから、って、え？」
「日曜日な。」
去年の今ぐらいの時期、あたしは景吾と付き合っていて
景吾の誕生日には金木犀が香る、あたしの行きたかった公園に行った。
「景吾、せっかくの誕生日にごめんね。」
「笑え。」
「はい？」
「俺はAの笑った顔が見たいだけだ。」
さらりとそんな言葉を言うもんだから、何だか可笑しくて笑った。
腹筋が割れてしまうぐらい笑った。
「景吾、さすがだよ、ふふ。」
「何がだ。」
少し怒ったような、恥ずかしがっているような顔をした景吾は可愛くて
日曜の午後、公園の端のベンチでキスをした。
始めは驚いていた景吾も、いつもの余裕の笑みを見せた。
きっと人生で最高の日曜日だった。
それから季節は足早に過ぎて、何となくあたしたちは離れていった。
大きな喧嘩があったわけでも、どちらかが浮気をしたわけでもないけれど
自然な流れで離れていった。
時は巡りまわって、また金木犀の香りがする季節になった。
あたしはあれからどの季節もそれなりに楽しんで笑っていた。
だけど、今になって初めて寂しいと思った。
景吾を思い出して泣きそうになった。
あの薄くて綺麗な唇にキスがしたいとか、見た目よりも逞しい身体に抱き着くとか
そんなことがしたいわけではなくて。
気付くとメールの着信が鳴り響いていた。
景吾。
あなたも一緒なのね、同じことを考えていたのね。
このちょっぴり寒くて、青い空の下、あなたもあたしを。
『A、あの公園で待っている。
早く来い。俺を待たせるな。』
一緒に誕生日を祝おう。
おめでとう、景吾。
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吹雪 - すみません、真田君の漢字違います。弦一郎です。 (2022年4月17日 13時) (
レス) @page27 id: ac8fe01e1f (このIDを非表示/違反報告)
星華 - もう本当に良かったです！本当にみんなカッコよくて素敵だと思いました！応援してます。 (2018年9月8日 22時) (レス) id: b55a00a283 (このIDを非表示/違反報告)
琥珀 - サイコーでした！！どの話も内容が濃ゆくて良かったです(*^ ^*) (2015年7月24日 22時) (レス) id: 26a2606d52 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - 真優さん» 不二で書いちゃった…笑 イメージが不二でしたの！ (2015年3月19日 13時) (レス) id: 3e05b36322 (このIDを非表示/違反報告)
まる(プロフ) - ぱるミンさん» 思い立ったらすぐ行動です笑 るみんちゃんも早速見てくれてありがとう(*´ω｀*) お別れって意外と深いものですね… (2015年3月19日 13時) (レス) id: 3e05b36322 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：まる | 作成日時：2015年3月19日 13時
