イヤーカフ２ (ページ6)

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『お邪魔しま～す…』

それから数週間後のある日

時間割の都合で早めに終わってスタジオに着けば
案の定知ってる顔は誰もいなくて

楽器をやらない私がこの場に居座るのは気まずくて
やっぱり出てこうとすると

出入り口で誰かとぶつかった

『…すみません！』

そう言って見上げれば

？「あ、あの時の…」

あの日軽く会釈してくれた彼が立っていて

？「あの、よかったらちょっと話しません？」

そう言ってスタジオの扉を閉めた

？「よかったら座って」

そう言ってわざわざ椅子を用意してくれて
私を座らせた

自分は床に座ってベースを弄る

『…あの、お名前って…』

？「あ、そっか！」

自己紹介してなかったんだ！

そんなことを言って顔を上げて
私の顔を見て言った

「俺、松田元太って言います！」

これが元太との初めての会話だった

「松田元太」

その名前に聞き覚えがあって記憶を辿る

『…げんげん、さんですか？』

海斗がふざけて呼んでた、それらしき名前を辿って
少し怪しみながらもそう聞けば

「そうそう！げんげん！」

そうやって無邪気に言う彼は爽やかで
きれいな黒髪をふわっとなびかせて
くしゃっと笑った

「え、海斗と俺の話すんの？笑」

『なんか、すごいモテるって話は聞きました…』

「…この話やめ！」

何か気に入らなかったのかその話はそれ以上
深く話すことはなく

「海斗の彼女さんの、Aちゃんだよね？」

私の顔を見てそう言った

「海斗からよく話聞いてたし顔も知ってたから
もう会った気になってた！」

なんて言いながらベースを弾く

何かを終えたらしい元太くんが

「俺の事元太って呼んでよ！俺はAって呼ぶね！」

『いきなり呼び捨ては、ハードル高い…』

「えぇ～、じゃあ元太くんでいーよ！」

予想以上にぐいっと詰める距離に驚くけど

なんだか嫌な気はしなくて

人懐こい彼と少し話しただけで
距離が縮まった気がした