イヤーカフ２ (ページ35)

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久々に会った海斗は
私が知ってる海斗のままだった

外見はかなり変わっていたけど

喋り方も
間の置き方も
笑った時にできる目尻の皺も
話す声のトーンも
私を見て優しく笑う顔も

そんな事を考えてれば
いつの間にか最寄りに着いていて

急いで降りて改札を通る

海人「あ、やっときた」

『…海人？』

声の先に視線を向ければ
先に帰ったはずの海人が、今朝と同じ場所に立っていた

海人「遅い…って言っても1時間ぐらいか、」

『え、ちょっと待って、先帰ったんじゃないの？』

海人「だって今日は俺とのデートでしょ？」

『…そうだけど』

海人「だから最後にご飯、付き合ってよ」

そう言って歩き出す海人の後ろを
置いてかれないようについていった

今日ずっと手を繋いでいたからか
今繋がれない手に違和感を覚えつつ

しばらく歩けば居酒屋のチェーン店に辿り着いた

いろんな方向から聞こえる
大きな声に歓迎されて少し奥に進む

店員「ご注文お決まりになりましたらお呼びください！」

元気な声でメニューを置いて
その場を離れようとする店員さんに

海人「とりあえず烏龍茶2つ、お願いします」

と海人が声をかけた

『…飲まないの？』

海人「ん？今日は飲まないよ」

『…そっか』

その後黙り込んだ海人に合わせて
私も無意識に口を閉じる

なんで待っていてくれたのか
その本心を私から聞くことができなかった

少し長めの沈黙の中
限界を迎えた私のお腹は空気も読まず音を鳴らす

『…ごめん』

恥ずかしくて、一気に顔が赤くなった
咄嗟に下を向いてしまった顔を上げることができない

海人がどんな顔をしてるのかわからないけど
クセのある笑い声が頭上から聞こえてきた

恐る恐る顔を上げれば大きな口を開けて笑ってた

海人「頼んでいいよ笑」

そう言って私にメニュー表を手渡す

海人「好きなの頼みなよ笑」

『…そんな笑わないでよ』

海人「いーじゃん、可愛いよ笑」

なんて言いながらずっと笑ってる海人を放って
メニューを見ながら食べたいものを探す

『あ、これいいかも…』

提案しようと思って頭を上げれば
海人はさっきとは違う、優しい眼差しで私を見てた

すると海人は大きなため息をついて言った

海人「俺やっぱAの事めっちゃ好きみたい」

周りの話し声に紛れた聞き間違いかもしれない
でも確かに聞こえたその言葉の
意味を理解するよりも先に

そう言った海人は頬杖をついて笑ってた