イヤーカフ２ (ページ32)

今日:25 hit、昨日:4 hit、合計:49,648 hit

81 ページ32

『もうお腹いっぱい…』

海人「…そろそろ帰る？笑」

数分前にそんな会話をして
駅に向かって歩き始めて

駅の近くに着いた頃
海人は思い出したように突然

海人「寄りたいところあったんだ」

と呟いた

海人「寄ってい？」

『うん、いいよ』

そう言って向かった先は本屋さんで

賑わう商店街の中にある
少し大きめの本屋に立ち寄った

CDやDVDのレンタルや販売も行ってる本屋で
海人は好きな雑誌を探してて

暇になった私は
『別の方見てくるね』と海人に伝えて
いろんなところを見て回った

『あ、これ』

レジ近くを通れば
設置してある新曲販売コーナー

そこに私がよく聞くアーティストの
新しいCDが置かれていた

どんな曲なんだろう…

少しだけ聞いて買おうか悩んだけど
なんとなく次の機会にすることにして棚に戻す

『…海人？なにか買うの？』

海人「…んー、やっぱいーや」

『そっか』

海人「ごめん、せっかく寄ってもらったのに」

そう言って謝った海人は
当たり前かのように手を繋いだ

私自身も繋がれた手を自然と受け入れ
2人で出口に向かって歩き出した

『…え？』

出入り口の近くの
さっきまで私がいた新曲販売コーナーに

見覚えのある後ろ姿

背負ってるギターケースには
見慣れたキーホルダーが揺れていて

動けなかった

だって見間違えるわけがない

ずっと、ずっと…

少し横を向いたその後ろ姿に気付かれないように
私は瞬時に顔を逸らした

海人「え、A？」

急いでこの場から離れたくて
海人の腕ごと引っ張って早足で歩いた

『だめだ、会っちゃいけない』

会ったらきっと戻りたくなってしまう
彼に、縋りたくなってしまう

私にとって、彼が全てだったから

お店を出て一目散に駅へ行こう
見なかった事にして、"楽しかったデート"で終わらせよう

そう思ってたのに

？「…海人？と…A？」

ずっと、ずっと聞きたかったその声が
私のすぐ後ろで聞こえた

『…海斗』