イヤーカフ２ (ページ19)

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[海人side]

あの日から、俺が無理やり学校に連れ出したあの日から
Aはサボらず学校に来るようになった

あの後、海斗と話して決めたんだってさ

やっぱり俺には、Aの最後の一歩は押せなくて

「その役目は海斗か…」

またこうやって、勝手に振り回されて落ち込んで

嫌になるな～、この感情

そんな俺のことなんて、まるで眼中にないように

近い距離で俺の顔を見て
とぼけた顔でわからない問題を聞いて

気の抜けたその態度も
大きな口を開けて笑う顔も
いじけて拗ねる時少し膨らますほっぺたも

「俺の前だけでいいのに」

自分の邪念との闘いでもあった7ヶ月
無事試験を終えて項垂れるAに
何か渡そうと自販機の前で立ち止まる

「…何が好きなんだろう」

いつも水を飲んでるところしか見かけなくて
わからなかった

さすがに水奢りはカッコ悪いし

とりあえず女の子が好きそうなカルピスを買って
教室に戻れば

窓の外を眺めて項垂れてるAが目に入って

買ってきた飲み物を渡せば嬉しそうに受け取った

…そのくせ飲んだ後、喉を押さえて一瞬顔をしかめる

不安になって

「あんま好きじゃない？」

って聞いたら

『大丈夫、好きだよ』

だってさ。俺のことじゃないのにね、

その言葉にちょっとだけ嬉しくなって、
だいぶ単純な自分に呆れる

『ねぇ、一緒に見ようよ』

合格発表の話になった時
Aは俺にそんな事を言った

好きじゃないくせに、そういうところ期待させないでよ

それは海斗と見るもんじゃないの？

『だって怖いじゃん、ネットで見れるし学校のパソコンで一緒に見ようよ！』

最初はそうやって言ってたくせに

『だって私が試験受けれるようになったのも海人がずっと勉強付き合ってくれて学校休まないように見張っててくれたおかげだし。』

『自分の勉強だってあるはずなのに私の分まで見てくれてすごい感謝してる…だから結果は海人と一緒に見たい』

いつだって、Aは

俺が諦めようとした瞬間にこうやって爆弾を落とす

その発言はAにとっては、ただ事実を述べただけの
なんの意味も持たないものかもしれないけど

ただの友達としてしか、俺のことを見てなくても

海斗より俺を選んでくれたこの瞬間が

また俺を深い沼に突き落とす

…もういっそのこと、そうやってずっと俺を夢中にさせて