イヤーカフ (ページ46)

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一曲目が終わったらしく

観客から拍手の嵐

隣で海人が

「盛り上がってんね～」

って言いながら両手を上げて拍手をする

私も周りに合わせて拍手を送る

そんな感じで2～3曲を終えて

「ついに次が、ラストの曲になります」

ボーカルの人がそう言った

周りからの明らかな落胆の声に耳に貸さず

ボーカルの人は海斗くんとアイコンタクトをして頷いた

「皆さんは何に恐怖や不安を感じますか？」

海斗くんの突然の発言にざわめきだす観客

「そう聞かれて思い浮かぶものはきっと人それぞれ沢山あると思います」

「その沢山のものの多くが日常に潜んでます」

会場中に響く海斗くんの声

「心に抱えてる不安や恐怖は外見からは伝わりません。みんな伝わらないように上手く隠して笑って生きています。でも僕はその抱えてるものを一緒に背負って、まだ知らない景色を一緒に見たいと思ってます」

さっきまで漂ってたどよめきもなくなって
会場中のみんなが海斗くんの言葉に耳を貸していた

「怖がらなくていいと、ずっと味方でいると寄り添って伝えてくれるこの曲をみんなに聞いてほしいです」

大きく深呼吸をして、少し笑って

「1人でも多くの人が頼れる曲になりますようにと気持ちを込めて歌います。聞いてください。」

その声とともに真っ暗になった視界

海斗くんがみんなに向けて言っていた言葉は

全て私に向けた言葉だったんじゃないかと

錯覚してしまうほど

離れた場所にいるのに

じっと私の方を見つめて

一つ一つ丁寧に言葉を紡いでくれた

「ねぇA、

　海斗なら信じてみてもいいんじゃない？」

座り込む私の背中をさすって海人はそう言った

溢れてくる涙を拭いながら

最後の曲を丁寧に歌う海斗くんの声を

耳と記憶に刻み込んだ

最後の曲を終えて大歓声の中退場した海斗くん達

その後すぐ始まる閉祭式に

ステージに寄っていた人達はバラけて

外からも沢山の人が押し寄せてきて

「一旦外行こ」

そう言って私の腕を掴んで出入り口へ向かった