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「…え?」



「…え?あ、ごめんなんでもない」



海人の声で気づいた



服の袖を握っていた手を離し



急いでリビングへ向かった



「まだあと3分の1は残って…」




ビール缶を持とうと伸ばした手は届かなくて



私の前で重なる腕に



グッと引き寄せられて覆い被さるように



背中にじんわりと感じる温もり



「ねぇ今のなに?」



耳元で海人が言う



「ごめん、違うの」



「なにが?」



「酔ってて、私もよくわかんなくて」




さっき、海人の服の袖を掴んだ理由は



私にもわからなくて



「無意識?」



「…ごめん」



謝ることしかできなくて




後ろで深く長いため息が聞こえたと思ったら



「今日のはAが悪いからね」



そう言ってぐるっと身体を回されて



噛み付くように唇を重ねた



長い前髪の隙間から見えるその目は



すごく熱を帯びていて



ぐっと後頭部を掴まれて引き寄せられて



つられて爪先立ちをする



いつもと違う体制に辛くなって服の裾を引っ張れば



「あ、悪りぃ」



って一旦唇を離す



行き場を失ったかかとが床に着けば



海人が背中を丸めてもう一度同じようにキスをする



苦しくなる呼吸に



うまく回らない思考回路



そんな私の手を握って寝室へ引っ張る





「身体あっつ、」



「…ん、やだ、」



「やだくないでしょ」




頭がぐわんぐわん揺れてもう何もわからなくて



ただただ目先の快楽に溺れた



優しく触れる、少し冷えた海人の手が気持ちよくて



いつもみたいな"私の為"の優しい行為ではなかったけど



好きだよって全身で言われてるような



そんな妙な感覚に陥った







目が覚めればまだあたりは真っ暗で



隣にいたはずの彼の姿は見当たらなかった



リビングに行き
ひんやりと差し込む風に目を向ければ




空いたベランダに立つ海人の後ろ姿



少し入ってくるその風に混じる独特な匂い



「…煙草?」



小さく呟けば海人がこっちを向いた



「起きた?」



そう言って飲みかけのビール缶で火を消して中に入る



「さみぃ」



そう言って私を引っ張って腕の中に収める



「…なんで今日来たの?」



そう聞いても口を閉じたまま



服についた煙草の匂いがふわっと香る



「なんかあった?」



いつもと違う海人を疑問に思って聞いたけど



「なんもないよ」



の一点張り



微妙な沈黙が広がる



私もなんだか深くは聞けなくて



それ以上聞くのをやめた

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設定タグ:TravisJapan , 中村海人 , 松倉海斗   
作品ジャンル:タレント
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作者名:ぽぽちゃ | 作成日時:2021年8月31日 17時

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