しすたーこんぷれっくす【宮】 (ページ3)

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入学式で部活のない俺はAとふたりで帰る。ちなみにツムはたくさんの新入生や先輩の女子たちに囲まれていて中々帰れそうになかった。馬鹿やなぁ。せっかくAと帰れるチャンスやったのに。俺は全員躱して来たで。

ちらっと斜め下におるローファーを履きポニーテールを揺らしながら歩くかわいいAを盗み見る。

もちろん毎日どんなAだってかわいいんやけど、高校生になってから可愛さがさらに増している気がする。どんどん成長して美しくなっていく妹に、嬉しさと同時に不安と心配に呑まれる。

周りに視線を移すと、たくさんの男からの視線を感じる。ほら、バス停までの短い距離やってお前はこんなにも視線を集める。

少し耳をすませば｢あの子かわいくね？｣｢それな。｣という雑音が聞こえて思わず耳を塞ぎたくなる。

｢バスの時間やばいかもしれんから急ぐで。｣

『えっ！』

小さくて白くて柔らかいAの手を掴んで走り出す。ローファーを履いているAが転んだら困るから、速さに気をつける。まぁ俺らの妹やからと言うべきか、Aは足速いんやけど。

バスが発車するまであと15分。ここから歩いてバス停まで10分もせずに着くんから時間がギリギリなのは嘘なんやけど…。

俺は、Aのことが可愛いと言っていた馬の骨どもを睨みつける。すると彼らはビビったように顔を強ばらせた。俺ごときにビビっとるような奴にAのこと任せられる訳ないやろが。

春風が吹けば、隣から香るふわっとした女の子の匂い。同じ柔軟剤に同じシャンプーを使っとるはずなのに、Aからほいい匂いがする。何だかとてつもなく愛おしくなって、左手から伝わる温もりにギュッと力を入れた。