loss of memory 阿部恋シリーズ (ページ5)

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5 阿部side ページ5

目を覚まして嬉しいはずなのに、なんだか落ち着かない。

なんで、あの時Aちゃんは俺から目を逸らしたんだろう。

もしかして、俺って認識されてなかったのか。

1人モヤモヤとしながら考えていると、深刻そうな顔をした2人が部屋から出てきた。

｢…Aちゃんは？｣

滝沢｢…Aは特に体には麻痺とかは残らなかったみたい。ただ…記憶がないらしいんだ。この数年間の記憶が｣

｢え…記憶が無い？｣

滝沢｢…そう。今のAは18歳の記憶で止まってる。だから、SixTONESの事もSnowManの事もわかってない…阿部ちゃんの事も｣

あぁ、だから俺を見ても何も反応がなかったんだ。

意外と冷静に納得している自分自身がいることに驚いた。

大切な人の記憶から俺という存在が消し去られたというのに。

それから、しばらく椅子に座っているとバラバラと仕事を終えてか向かってくるメンバー達。

滝沢くんや山梨さんたちが1人1人に説明している中俺は、疲れて寝ているAちゃんをガラス越しに見ていることしか出来なかった。

深澤｢阿部ちゃん…｣

｢ふっか｣

俺たちの間には重い空気が。

｢…Aちゃん俺の事わからないんだって｣

深澤｢あぁ…｣

｢さっき一瞬目があったのに…俺だって認識されてなかった…ただの他人みたいに目逸らされてさ。すっげぇ今苦しくて、辛くて…俺どうしたらいいのかわかんないだ｣

自然と涙が溢れ、人目もはばからずにその場に泣き崩れる。

｢…なんで、Aちゃんなんだよ。なんで、忘れなきゃいけないんだよ…今までしてきた努力も築き上げた人間関係も全部！また、1人で努力するじゃんか…抱えた傷がやっと癒えたのに…なんでだよ｣

俺の事を忘れられたことも、もちろん辛いけど今まで死ぬ気で頑張ってきたことを、忘れてしまうことが俺にとっては辛かった。