loss of memory 阿部恋シリーズ (ページ25)

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記憶を戻すにはもちろん、外の環境に触れた方がいいのもわかってるけど、この病室を出たらきっと知らないことが沢山あって、それに向き合わなきゃいけない。

正直、怖い。

私が知らないことに触れるのが。

私が思い描いていた未来になってるのかな。

私が思い描いていた未来にかけ離れてたら。

そんな不安が一気に押し寄せる。

だって私自身あまり好かれてた方じゃないって、言うのを自覚してるから。

『…っ。大丈夫…私は1人でもできる…』

布団に潜り、グッとシーツを握り締めているとコンコンと静かに扉をノックする音が。

布団から顔を出して返事をすると、阿部さんがそこには立っていた。

｢…大丈夫？体調悪かったもしかして｣

『あっ…全然。色々考えてて』

慌ててボサボサになった髪の毛を直して、ベッドに座る。

阿部さんがベッドの横に座り心配そうに私の顔を覗き込む。

｢なんかあったの？｣

『…大したことじゃないんです。本当に』

慌てて、笑顔を向けるが心配そうな顔をしたまま。

｢…もし、俺が聞いてあげられることがあるんだったら聞くよ？話すだけでも楽になるかもしれないし…｣

1人でも大丈夫だって思っているのに、阿部さんを前にするとなんだか甘えてしまう。