loss of memory 阿部恋シリーズ (ページ24)

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森本｢よっ｣

『…こんにちは慎太郎くん』

私の病室に顔を出した慎太郎くんは、そのままベッドの横の椅子に座る。

森本｢…阿部ちゃんじゃなくってごめんな｣

『…別にそんな事言ってないよ』

森本｢そんな顔してた｣

否定するも、でもほんの少しだけ阿部さんじゃないかって期待していたのもあった。

毎日阿部さんが来るのを待っている自分がいるのもわかってるから。

なんでかわからないけれど阿部さんに会いたい。

森本｢そんな悲しそうな顔すんなよ｣

『…だからしてないって』

森本｢はいはい。山梨さんと一緒に来たから多分あとから山梨さんも来るから｣

『珍しいね2人で来るなんて』

森本｢まぁ俺も仕事終わりだったし、山梨さんもここ来るって言うから乗せてもらってさ｣

世間話をしているとノックする音が聞こると、山梨さんが顔を覗かせた。

山梨｢A元気？｣

『うん。普通かな』

山梨｢相変わらずの返事ね。ねぇ、A退院できるって言われたけどどうする？｣

『えっと、ここから出れるの？』

山梨｢うん。もう、体を動かす分には問題無いって…無くした記憶は、日常生活に触れれば戻るかもしれないって話があってね…。もちろん先生も直ぐに退院じゃなくていいって。どうするか考えておいて｣

『…わかった』

突然と告げられた、退院に私はどうするべきか少し悩んだ。

もちろん、退院した方がいいのもわかってるけど私の知らない世界を、歩かなきゃ行けない事が怖かった。