loss of memory 阿部恋シリーズ (ページ21)

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『…えっと』

｢無理しなくていいよ。俺たまたま、近く通って様子見に来ただけだから…お邪魔しました｣

椅子から立ち上がり帰ろうとする姿を見ながら、なんだか急にソワソワとし始めた。

なんでかわからないけれど、このまま帰ってしまったらもう会えない気がして急に不安になる。

なんでこんなに不安になってるんだろう私は。

『ぁ…あの！』

慌てて、阿部さんの腕を掴み帰ろうとするのを阻止した。

その行動に自分でも驚き、阿部さんも驚いていて一瞬で頭が真っ白になる。

『え、、えっと、、あの…また来てくれますか？』

｢え？｣

『…もっと阿部さんとお話したい気がして…でも、迷惑じゃなかったらでいいです。すみません』

スっと掴んでいた腕から手を離しベッドのシーツを握る。

なんで、こんなことをしたのか、こんなことを言ったのか分からず反応が怖かった。

もし、阿部さんが冷やかしに来ただけだったら。

そんなことを考えた瞬間一気に体が冷える。

｢…いいの来て？｣

『…はい…阿部さんが嫌じゃなかったら…また、来て欲しい…です』

｢もし、Aちゃんがいいんだったらまた、来たい｣

名前を呼ばれた瞬間ドクンッと心臓が跳ねるのを感じ、阿部さんといると変な感覚に包まれて、でも嫌な気はしない。

『…待ってます』

｢うん。今日は帰るね｣

『はい…気をつけて』

手を振ると、手を振り返してくれてそのまま部屋を出ていってしまった。

なんだか、阿部さんがいなくなってしまって一気に寂しくなる気がして不思議な感覚。

『…なんか変』

山梨｢何が？｣

『なんか、阿部さんと居ると落ち着くけど落ち着かない…でも、もっと話したい気がするけど私なんにも知らない…』

山梨｢…そんなに焦る必要ないよ。ゆっくりでいいんだから…また来てくれるって言ってるし｣

『…うん』

阿部さんが来て数分だったけれど、なんだかすごい不思議な感覚に包まれた。