loss of memory 阿部恋シリーズ (ページ13)

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13 阿部side ページ13

家に帰り、ダンボールにAちゃんの私物を詰めていく。

家でよく着ていた部屋着、いつも朝使っている化粧品、お気に入りのアクセサリー、履きなれた靴。

部屋の中からどんどんとAちゃんの物が無くなり、ぽっかりと空いたスペース。

なんだか、思い出がなくなってしまうみたいで苦しくなる。

あの日普通に朝一緒に過ごしていたはずなのに、突然の居なくなってしまった大切な存在。

本当はそばにいたいのに、そばにいてあげられない。

そばにいたら負荷をかけてしまうから自ら身を引く。

本当にそれで合ってるのかなんて、自分自身で答え合わせをしても答えが分からないんだ。

｢Aちゃん本当にこれで合ってるのかな…｣

ダンボールの蓋を閉めているとポタポタと落ちてくる涙。

｢っ…Aちゃん｣

グッと我慢していたものが、ぶわっと溢れ出す。

本当は会いたいんだ会って抱きしめて、Aちゃんがそばにいるのを感じたいのに。

このダンボールと共にその気持ちにも蓋をしなきゃいけないなんて。

自分が選んだ道があまりにも残酷すぎて、苦しくなるけどもっと苦しいのはAちゃんだ。

今は俺なんかじゃなくって、知ってる人がそばにいた方がいいに決まってる。

だから少しの間だけこの気持ちに蓋をするだけ。

一生会えないわけじゃないんだから。

Aちゃんの私物をダンボールに詰め終えると、少しの間だけ大切な人にサヨナラを告げた。