loss of memory 阿部恋シリーズ (ページ15)

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『ねぇ、誰の事？今の私は知ってるの？』

森本｢…知らないかもな。でも、これからずっとAのことを支えてくれる人なんだよ。そいつは｣

『慎太郎くん？』

森本｢…無理にとは言わない。でも、お願いだからそいつの事だけでも思い出してやってよA｣

悲しそうに私を見つめられる。

『誰なの？』

森本｢俺の口からは言えないんだよ。言うなって言われてるから…だから、Aが思い出さないと…ごめん余計なこと言った…忘れて｣

鼻をすすりながら、無理矢理笑う。

なんで、慎太郎くんがそんなに悲しそうにしているのか。

チクリと胸の奥に何かが刺さる。

私だけが違う時代を過ごしているこの世界。

私が生きている世界とは別の世界なんだと改めて理解した。

この世界に追いつくには思い出さなきゃいけないんだ。

思い出せればみんなが辛い思いすることなんてないのに。

山梨さんも滝沢くんも、慎太郎くんも私の知らない人たちも。

『っ…』

森本｢A？｣

思い出せば全部が元に戻るんだ。

『…思い出せない…なんにも…』

森本｢ごめん。余計なこと言った。無理に思い出さなくていいから…A！｣

私を抱きしめてくる慎太郎くんを無視して記憶を取り戻そうと色んなことを考える。

『…1人取り残されてるの私は…そんなの嫌だ…迷惑かけたくない…誰にも…』

森本｢A！？｣

ガツンっと頭が痛むとパチンっと目の前が暗くなり意識が無くなった。

何となく聞こえてたのは慎太郎くんが叫ぶ声だけ。

私は一体誰を忘れてしまったんだろう。