【ヒロアカ】助けて、ヒーロー！【轟焦凍】 (ページ50)

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「大変だ！緑谷が……！」
「上鳴くん！？」
「なに！？緑谷になにがあったの！？」
「敵と、遭遇したらしい……！」
「緑谷はどこ！？」
「最初にみんなで待ち合わせした入り口付近だ！」

　私と三奈ちゃんは互いに顔を見合わせて走り出す。もちろん、行き先はデクくんのもとへ。彼女のような個性で手助け、なんて華やかなことはできなくとも、負傷者の手当てくらいならできる。
　どうしてデクくんばかり、危険な場所に出会うのだろう。ただでさえ怪我だらけな彼をこれ以上危険に晒さないでほしい。

「三奈ちゃん！いた、デクくん！」
「緑谷ー！大丈夫！？」
　デクくんにはお茶子ちゃんがすでに付いていた。彼女も強面に眉が寄せられている。デクくんは私たちと顔を合わせることもなく震えていた。
「芦戸さん、Aちゃん……」
「お茶子ちゃん、デクくんは……」
「うん。デクくん、死柄木に会ったらしくって……」
「死柄木！？ちょっ、大丈夫なの！？緑谷！」
「三奈ちゃん！」
　彼女は震えているデクくんに迫るものだから、私は思わず彼女の桃色の手を取ってしまった。
「デクくん！」
　すかさずお茶子ちゃんが彼に駆け寄る。それでもデクくんは虚像を見ているような顔をしてお茶子ちゃんなど最初からいないものとして扱っていた。
　彼の葛藤に、お茶子ちゃんだけが心配そうに眺めていた。

◯

　緑谷くんが死柄木と遭遇し、数日が流れる。不安があろうとなんだろうと非情な時間は流れるものであり、結果、ひたひたと走りも休みもせず一定の速度で近づいて来た林間合宿の日を迎える。
「飯田くん、がんばろー！」
「うむ、やるからには全力だ」
「でもまあ、この合宿では怪我人がたあっぷりでるからねえ」
「た、たあっぷり……！？」
「ま、対処できないほどじゃないさね。適当にがんばりなさいな」
　世界保健医界隈の権威だと俺が銘打つ彼女の不吉極まりない一言を麗日くんと聴きながら林間合宿は始まった。
　主に個性の強化を図る林間合宿は、世間が想像しうるものとは違っていた。お日様燦々の中を口笛吹きながら歩き、ミミズだってオケラだってアメンボだって生命の脈動のもと必死に生きている姿に感服し友達百人作るが如く彼らと共に自然の調和を味わう。それが林間合宿だと思っていた。言わずもがな、俺もそうであった。