【ヒロアカ】助けて、ヒーロー！【轟焦凍】 (ページ41)

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「ええ。しかし、私……実技はてんでダメですの」まさか、そんな！
「そんなことないよ、あり得ない！百さんは轟くんと並んで推薦で入ってきた特待生なんだから！」
「……轟さんは当然ながら、爆豪さんや緑谷さん。ヒーロー科は私など足元にも及ばぬ実力者が揃っています。もはや、特待生という言葉は関係ありません」

　百さんは苦く表情を曇らせていた。私からすれば、彼女だって十分すぎるほど立派なヒーローだ。私を抱きしめてまで守ってくれた恩が全てを包み隠さず物語っている。あっ、煩悩まで物語ってしまった。立ち去れ！肌色！

「と、とにかく！百さんのすごさは私が知っているから！」
「Aさん……」
「だから、気にしなくていいよ！ねっ、ね！」

　私は今になって、彼女を直視できずにいた。なんとも説得力のない姿でしょう。顔を赤らめる私に、彼女の悩みを吹き飛ばす力などない。
　しかし、百さんは「……ありがとうございます」と物腰柔らかく微笑んでいた。
　その表情にまたもや私が顔を真っ赤にするのだ。なんだか理不尽だ。完璧という言葉は今この瞬間のために存在するような気さえする。一語の存在意義すら創造してしまう彼女に、そして、その彼女すら悩みを抱えるという事実に、私はつくづく理不尽だと思うのです。

「Aちゃん、どこか痛いのかしら」
「そ、そんなことないよっ」
「それならいいけどね」
「あの、梅雨ちゃん」
「なにかしら」
「梅雨ちゃんは悩みとか、あるの？」
「それも、見方を変えれば案外どうでもいいものだったりするわ」
「……さすが梅雨ちゃん、強いなあ」
「ええ、蛙吹さんは弱点らしいものが見当たりませんもの」
「梅雨ちゃんと呼んで」

　どんなヒーローでも、悩みはあるものなのでしょうか。梅雨ちゃんは相変わらずヘラリと笑っているけれど、その真相は靄の中。
「Aさんには指一本触れさせませんわ！」私はあの時、百さんの腕に抱かれた時だ。ああ、もう大丈夫だ。だって百さんがいるのだから。そう思って、彼女に体を預けられた。
　彼女が暗い顔をすれど、この安心感だけは絶対に絶対なのだ。私は、未だ力なく笑う百さんを悩ましげに見つめるだけです。