【ヒロアカ】助けて、ヒーロー！【轟焦凍】 (ページ38)

今日:1 hit、昨日:9 hit、合計:13,724 hit

37 ページ38

視界が歪む。あれ、よく見えないなあ。瞬きをした。だんだんと明るくなっていく。白い？それに、誰かいる？ああ、なんだか体が覚えている空間だ。紆余曲折を経て、ようやく私の目は本来の役割を取り戻した。

「目が覚めたかい」

　私を覗き込んだのは、リカバリーガール。彼女を見るとなぜだか雛鳥が巣に帰ったような安心感に包まれる。
　体に当たる柔らかなベッドすら懐かしく感じ、私は無性に泣きたくなった。ふと首を捻ると、隣のベッドにデクくんがいて、瞳に溜まった涙が一粒こぼれた。

「大丈夫よ」
「…………」
「あんたのせいじゃないよ」
「…………」
「もう少し寝てなさいな」

　リカバリーガールはそっと私のもとから去っていく。デクくんは包帯を着ていた。身体中に巻かれていた。
　爆豪くんにつけられた傷は跡形もなく消えていた。私は包帯などつけていない。ただただ保健室のベッドに横たわっている、授業をスッぽかす不良少女のような図だった。
　気持ちまで不良になったらしく、何もする気が起きない。もう一度寝てしまおう。濡れた頬を拭い、私は再び目を閉じた。

　しかし、そうはさせない来訪者がいた。私は閉じようとした目を開く。すると、目が合ってしまった。

「轟くん……」
「A……大丈夫、じゃなさそうだな」轟くんはデクくんに穏やかな眼差しを向けた。
「私とデクくん、その、爆豪くんの爆発に巻き込まれたんだよね？」
「ああ。爆豪はあの時……体育祭の後、Aに噛み付いた時みてえな爆発を起こしてやがった……」
「そっか……」
　やっぱり、気のせいではないのかもしれない。「私やあんたのような個性は、安易に使えるものじゃあないの」リカバリーガールがおっしゃるとおり、私は増強型の個性をもっているのでしょうか。でも、それならなぜ、爆豪くんにだけ二回も？もしかして、発動条件が違う？
　人類が存在する理由よりよっぽど難解な問いに、私の頭は悲鳴をあげた。痛むこめかみを押さえる。
「牙はなくとも、使い方を誤れば破滅を招く。そこを理解しなさいな」私の個性とやらも、のちに破滅か救済かの選択を迫られる時が来るのでしょうか。自分の力ながら未遭遇ではあるけれど。
　自分の範疇を大いに超えた規模の話、私は一体どうなってしまうの？というより、私の個性はなんなの？得体の知れない自分ほど、不気味なものはない。