【ヒロアカ】助けて、ヒーロー！【轟焦凍】 (ページ35)

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「舐めプ野郎になんざ噛まれたらブッ殺すぞ！」
「そう言われても……む、無理だよ！相手は轟くんだもの……！」なおも轟くんは足を止めない。
「うるせェ！さっさと逃げやがれ！」でも、でも……！「爆豪くんが……！」「黙れ！」
　ついに、轟くんが私の前に来た。私は思わず腰を下ろす。彼は構わず冷ややかな視線を下げた。
　その目が、凍ったような表情が「呼べよ！ヒーローを！」あの時の彼とは容姿だけよく似た別人だと思った。
　彼は私の腕をとった。そして、口元へ運ぶ。
「逃げやがれっつってんだろ！」
　この人は誰？「必ず守ってやるから！」ヒーロー？怖い、「……怖かったんだよな」怖いの、怖いよ！

　その時、彼の動きが止まった。私を見つめたまま。

「……A」
「と、どろきくん……っ」彼は目を見開いていた。
「……泣きそうだな、お前」握られた腕を引かれた。いつかこんな瞬間があった？彼の瞳は狼狽えているように見えた。

「舐めプ野郎ォォォ！」パリィィィン！ガラスが割れた！？思わず肩を揺らした。爆豪くんだ！彼は氷の腕輪を付けている。まさか、あの氷壁を腕力だけで破ったというのでしょうか。
　頬が氷に包まれかけている轟くんが振り返り、咄嗟に炎を放出する。しかし爆豪くんはなんとその火炎の中へ飛び込んでいったのだ。「死ねェ！」そして、凍った腕で轟くんの頬を殴り飛ばした。
　私は彼に駆け寄った。「爆豪くん……！」「うるせェ！」彼は火傷ひとつしていなかった。轟くんの個性を見事に利用してみせたのだ。
　戦闘のために生まれてきたと豪語されても頷ける彼は、時間終了の合図と同時に私から離れていった。

　私はただ守られていただけとはいえ、轟くんに勝った。しかも、轟くんが勝てたはずの戦いに、だ。
　彼は目を閉じ、手足を広げて座り込んでいた。無造作に置かれた人形となった抜け殻の彼は弱々しく見えた。
　頬に怪我はしていないかな。体温はどうなんだろう。爆豪くんに負けたことを根にもっているかもしれない。気になることはたくさんあるけれど、何を言ったところで人形に魂を吹き込めるでしょうか。できることなどありません。
　轟くん。彼に対して、爆豪くんから拳をいただく直前に「やっと助けに来てくれた」と私は安堵した。不思議なものです。助けてくれたのは爆豪くんだというのに。