【ヒロアカ】助けて、ヒーロー！【轟焦凍】 (ページ20)

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白熱した体育祭が終わり、ヒーロー科は職場体験の時期にさしかかる。これではしばらく保健室も廃業同然だと、またもリカバリーガールに暇を出された。「たまには寝て過ごしな。ほい、お菓子」だそうです。
　轟くんにも保健室の座敷わらしのようだと言われたわけだし、やっぱり外に出るのが一番！私は座敷わらしから人間への一歩を繰り出したのです。
　さて、どこへ行きましょうか。また穏和の権化である喫茶店に行くのもいいけれど、今回は休憩するとは限らず、心と足の赴くままに進むこともできる。
　好きなことを好きな時に好きなだけしていい。ああ、ヒーロー科のみんな、ありがとう！しばらくの職場体験、会えないことが寂しくなるけれど、たまの余暇を楽しむことくらいしてもバチは当たらないと思うの。頑張れみんな！みんなのおかげで、この街は今日も平和です！
　そうして、私は気を引かれた店へブラリと吸い込まれていく。時に小物を売る店、時に高価な宝石店、時に夜の街を言わんとした煌びやかな服を並べる店。あちらこちらに揺れては興味の向くまま行進していきました。
　店々は私と住む世界が違っていました。見慣れた街並みに点在する芳醇な異界への香り。そこへ足を踏みいれようものなら日常を忘れ、出てくる時には「ああ、帰ってきた」と不意に安堵する。これには、冒険心をくすぐられた。
　ただし、私は冷やかし客だった。手には何一つ荷物は増えていないくせに、心には冒険の書が積もり積もって、ヒーローにはなれずとも勇者になれた気がしました。店側からすれば、顔も見たくない勇者です。
　好きなことを好きな時に好きなだけ！呪文のように詠みたくなる合言葉と共に、私は次なる好奇心へ歩き出した。

　しかし、その目論見は呆気なく砕けることになった。「あ、あ、ヴ、ヴィラ、敵だ！」声も体も震えた男の人が腰を抜かす。「ヒーローは！？」「助けてくれえ！」街の賑わいは瞬時に逃げ惑う人々の阿鼻叫喚へと変わった。
　一拍二拍気後れした私は「逃げろ！」崩れる建物や満腔の悪、「あなた、死ぬわよ！？」切れる電線に潰れる乗用車「ここは危険だ！」これらの音を聞き、惨状を目で見てようやく「ほら、早く！」

　彼らがいない現実を、思い出したのです。

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