【ヒロアカ】助けて、ヒーロー！【轟焦凍】 (ページ13)

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「まさか轟くんがいるとは思わなかったなあ」
「それはこっちの台詞だ。Aは保健室にいるイメージしかねえからな」
「私だって外に出るよ」
「……そうなのか」
「……本気でそう思ってたんだ」
「気がついたら保健室にいたからな、Aは」
「あはは、まるで私が保健室から湧いて出てきたみたいだね」
「……ちがうのか」
「……本気でそう思ってたんだ」

　轟くんとコーヒーを嗜んでいると、彼は意外にも天然の気があるようだった。普段は半冷半燃の個性を駆使し、ヒーローでしょうが敵でしょうがはたまたロボでしょうがを凍り尽くしたり焼き尽くしたりしているのだから、私は心底驚いた。人は見かけによらずとはよく言ったもの。ちなみに嘘を自白すると、彼が凍り尽くしている様はよく見かけるけれど、燃やし尽くしている様は見たことがありません。ええ。
　あの物静かな轟くんに吃驚な一面があるのだから、おそらくヒーロー科のみんなにはまだまだ私の知り得ぬ顔があるに違いない。せめて保健室に来る時くらいは、ヒーロー科のみんなともう少し話してみたいなあ。どことない心地よさにひとりニコニコ笑ってしまった。

「そういえば、A」
「なに？」
「この間は悪かった」
「ああ、あの時かあ。もう大丈夫だって。私、無個性って言われるのは慣れてるから、ね」
「そうじゃねえよ。人として最低なことをしたって言ってんだ」彼は俯いた。
「ヒーローになることを聞いた時、お前の手、震えていただろ」
「気のせいじゃないかなあ」
「気のせいだったら、あそこまでヒーローに尽くそうとしねえ」

　轟くんは真剣な目をしていた。だから、私も誠実に返さなくては、とコーヒーを飲む手を止めた。

「じゃあ、ヒーローらしくいてね」
「ヒーローらしく？」
「そう。私がヒーローの治療……なんて大それたことじゃないね。手当てをすることに誇りを感じるような、そんなヒーローでいてね」
「……おう」
「うん、それでこの話はおしまいにしよっか」

　そして、再びコーヒーを口にした。それは彼も同じで、ふたり同時に喫むコーヒーが砂糖を増やしたように美味しい気がした。この優しい味と穏和の権化のような心地、これこそ休憩というもの！それを信じて疑うはずがないのは言うまでもありません。
　しかし、そこで事件は起きたのでした。